12.吉祥寺のユザワヤに通って、店頭チェックした
福田:だから、iモードもこのパターンしかないと思って、バンダイとかいろんなところに「提携しませんか」って持ちかけたんです。ところが、ネット業界の感覚だと2年遅れたらもう相当後ろを走っていることになるので、「おまえ今更なに言ってんだよ」って、仲閒に入れてもらえなかったんですよね。で、こうなったら、もう新しいもの作るしかないと、有名なもの取りに行くのはマンガ以外潔くやめたんですよ。そうしたらたまたま『GOLDEN EGGS』が当たったんで、その後はもういろいろオリジナルをやって。2、3万人の会員を稼げるスマッシュヒットものが何個かあったと思います。
近藤:『RODY』とかもやられてましたよね。
福田:『RODY』もそうですね。ワーナーブラザースの『トムとジェリー』とかDLEの初期の『鷹の爪』もやらせていただきました。近藤さんのところにも随分いろんなコンテンツ、融通してもらいました。
近藤:そうですね。
福田:サンリオとかディズニーにない、キュート、かわいい路線は近藤さんの会社が多数権利を保有してた。
近藤:『Care Bear』もそうでした。
福田:他にも、なんか、キュート系、ファンシー系の文具も随分当たりました。吉祥寺の「ユザワヤ」行って、店頭チェックとかやって・・・。すっごい通ったのに、権利獲得できなかったのは、サンエックスの「リラックマ」。流行る前でしたから、その後の躍進が羨ましかったですよ(笑)けど、結局今はメジャーなものだけではなく、お客様の関心が分散してるのか、『チャージマン研!』みたいなサブカル作品が大ヒットしたりするんですね。
近藤:『チャージマン研!』・・古いやつですか。
福田:はい。40年前のアニメをLINEスタンプで出したら、LINEスタンプで大ヒットしました。
13.2011年の震災後は「無料」がキーワード
福田:ところで、ガラケーは絵文字から待ち受けになり、デコメになって、着せ替えになって進化していたのに、2011年に東日本震災が起きて、市場が一気に縮小して、iPhoneやAndroidなどのスマホが台頭してきて、今の時代になったわけですが、2011年前後って、キャラクターライセンス的にはどういう動きだったのでしょうか?
近藤:すごいバックリ言うと、2000年から2004年ぐらいが”クリエーターの時代”だったんですよ。2005年から2007年ぐらいまでが”絵本の時代”。2008年から大体2011年、震災ぐらいまでがアメキャラの時代だったんですよ。もしかしたら『ウサビッチ』もアメキャラっぽい系列だったんでMTVだとか。あのとき『スポンジボブ』とかで・・・。 弊社が日本で初めて正式にライセンスで紹介した『Care Bear』もそうですし、『POPPLES』もそうですし、PLAZAさんがライセンスされている『Suzy's Zoo』も、全部アメリカなんですよ。
福田:なるほど。
近藤:ところが、震災後は「無料」がキーワードになったんですね。ゆるキャラとか、ロイヤリティーがただっていうものも多かったですね。そのトップが『くまモン』。
福田:なるほど。
近藤:あと、無料でダウンロードできるコンテンツからヒットした『おさわり探偵なめこ栽培キット』。
福田:おお。『なめこ』もソニー・デジタルで配信させてもらいました。
近藤:あとLINEスタンプもそうですよね。2013、2014年ぐらいから、どんどん出てきた。従来あったお金払って手に入れる「付加価値ビジネス」がだんだんこう、ただで広げていくこと自体が付加価値になっていくっていう、逆パターンになっちゃったんですね。それが2011年以降です。
福田:まさに、フリーミアム時代ですよね。ソーシャルゲームが発信源で、99パーセントのユーザーは無料で楽しんで、数パーセントの人たちがライフか時間が欲しくて課金するって新しいビジネスモデルが台頭しました。
近藤:まさしくライセンス業界はそれになっちゃったんですね。そうすると、ただで知名度が上がったものの中から、いいのを選べばいいって流通になりますよね。それ以外はもう強いキャラクター、ディズニー、サンリオ、サンエックス、スヌーピー、ソニークリエイティブ、ポケモン、東映とかもう本当、数社でマーケットが流れている、寡占化が進んでいるんですけど、それプラス、たまに入ってくるものに一部チャンスがありました。でも、これ、日本のマーケットだけの話なんです。日本におけるキャラクターには、いやゆる「テリトリー論」があったのですが、LINEとかYouTube・・・。
福田:それがスマホ時代がきてグローバルの影響を受けるようになった。
近藤:YouTubeでグローバル化しちゃったんです。そうするとクリエーターが目指すところも変わってきます。今までデザインフェスタで知名度上がったものは、KIDDY LANDで売られる、ヴィレッジヴァンガードで売られることを目標にしていた人もいたと思いますが、今はもう世界を見るようになりました。だから私、これからの未来はすごく明るいと思います。ただキャラクターを広めるための手法が、今はまだSNSしかないんで、それに感情移入する、アニメ化するっていうところは、またここから誰かが作っていかなきゃいけない。
14.もう一つのキーワードは「ハンドメイド」
福田:近藤さんってキャラクターライセンスの王者っていうか、代名詞みたいな生き方されいますけど・・・。
近藤:いえ、多くの失敗をしているのでそんなことはないです。
福田:絵本も強かったし、アメリカンキャラクターも早々にハリウッドスタジオからライセンス取られた。でも、今みたいなフリーの時代になって、「くまモン」とか「なめこ」とかがはやると・・。
近藤:そこで流れを読み違えたんです、うちの会社は。
福田:一方では、メジャーキャラクターの寡占化が進んで、ミッキーだ、キティだ、そういうもので結構市場は満ち足りちゃったと。マーケット全体の市場規模って、デジタルを抜いたらやっぱり少子化の影響で下がってるんでしょうか。
近藤:いや、変わらないようです。
福田:変わんないんですか。
近藤:大体1兆6000億から1兆5000億辺りを推移しています。ただ、何が違うのかって、やっぱり年齢層が変わってきてる感じがしますね。実は2010年にアメリカにレポートを出す必要があり、2005年から2009年の動向を調べたことがあったんですよ。するとすごく面白いデータが出ていたんです。ある流通だけで蓄積したデータなんですが、5歳のキャラクターマーケットが2005年から2009年に70パーセントになったんです。逆に20代、30代は120パーセント、140パーセントあったんですよ。ということは、キャラクター市場が年齢がかなり上がってきている。今の多分ムーミンなどのロングランで愛されているキャラクターのヒットっていうのも、40代以上が支えているのかもしれません。
福田:なるほど。
近藤:20年前、30年前にキャラクター好きだった人が今もお気に入りを探していて、でも、「うーん、なんかサンリオとかじゃないよね」ってなったときに、「この年齢でも楽しめるのは」みたいな。時代背景としてちょうど北欧のライフスタイルもブームになり、その流れもあったかもしれません。
福田:昔だったら傾向と対策がはっきりと分かったんですけど、フリーミアム時代になると難しいですね。何でしょうか。やっぱり少量多品種というか、小さなトライブ(塊)がたくさんできてるようなイメージなんでしょうか。
近藤:ちょうどブログでも書いたんですけど、「無料」以外にもう一つ、キーワードとして、「ハンドメイド」もありますよね。今、キャラクターのライセンス講座で、クリエーターさんに「ライセンスなんかしなくていい」って言ってるんですよ。クリエーターさんが多いときは、ちょっと、周りがざわつくぐらい強く言うんです。なぜかって、自分で作って売ったほうが利益も大きいし、何より今、クリエーターさん、自分で作れば100パーセント自分のこだわりが再現できる。「ハンドメイドジャパンフェス」や「デザインフェスタ」「ワンフェス」などのコミケでは、全部自分で作った物だけで利益を上げている人が多くいると思います。売る場があるので、そういう時代になっちゃったんですね。バイヤーさんが取ってくれないんだったら、メーカーさんにライセンスする必要なくて、自分でヒットさせればいい。LINEのスタンプだって自分でヒットさせられる。そういう時代になったんで、セルフプロデュースができる人が、今後は生き残るかなと思っています。
福田:でもそれを「なるほど」って受け入れちゃうと、近藤さんのビジネスにはマイナスにならないんでしょうか。
近藤:もちろん引き続き1人、1人のクリエーターさんをヒットさせるっていうプロデュースもやるのはやるんですけど、どちらかというと今後はうちが培ってきたノウハウをクリエイターさんにご提供する場作りをしようかなと思ってます。
福田:発想としては、昔のポータル志向みたいなところに・・・。
近藤:戻りましたね。もしかしたら、今イーキャラ・メッケって、今やったらもしかしたら・・・。
福田:仕組みでね。
近藤:はい。今やろうとしてるのって、イーキャラ・メッケの発想の原点ですね。早過ぎちゃったんですね。
福田:早過ぎちゃったかもしれない。
近藤:16年前ですから。