近藤健祐 × 福田淳 対談 意外と知らないキャラビジネス考【中編】

19.デジタルでも『集める』『交換する』がキーワード

福田:時節柄、聞かざるを得ないんですけど、『ポケモンGO』なんて、どうご覧になってるんですか。

近藤:『ポケモン』が出る前から、私はゲームのライセンスをやっていたんですね。で、96年2月に『ポケモン』がゲームボーイで出たんですが、ゲームボーイ自体が、もう伸び悩んでいたハードだったので、確かそんなに期待されてなくて。その後、96年の4月から『コロコロコミック』の連載が始まり、97年にはテレビでアニメ化もされたんです。

福田:1996年? 最近って言えば、最近ですよね。

近藤:彼らの中ではそういうマーケティングだったと思うんですね。まずゲームやって、出版があって、最後にテレビまで行きゃあいいかなぐらいに思ってたと思うんです。本家本元のゲームボーイの販売数が落ちなかった。当時、ずっと調べてたんですけど、毎月コンスタントに10万本くらい出ていたと思います。ゲームって必ず初週いくと、半分、半分、半分ぐらいに減っていくのに。

福田:下がりますよね。そうですよね。DVDの海外テレビドラマシリーズと同じですよね。

近藤:そうですよね。ところが『ポケモン』は全く一緒なんです。毎月大きく売上げが落ちなかったんですよ。「おかしいね、これ」って、当時、任天堂のプライベートショーのような展示会があり山内社長の講演がったんです。そこで『集める』『交換する』がヒットのキーワードなんだ。」みたいなことを話されていました。

福田:プロ野球ゲームのカードと変わらないですよね、発想がね。

近藤:アナログがデジタルになって、それがモンスターっていう鉄板なベースになったんだ、みたいな話をされてたんですよ。なるほど、集める、交換するか、みたいな。今で言う拡散ですよね。

福田:ねえ。ソーシャルゲーム、全部そうですもんね。

近藤:で、そこからみんな集める、交換するカルチャーによって、ゲームボーイっていうハード自体が復活して、今の3DSにつながっていくわけですね。

福田:なるんですよね。

近藤:あれが素晴らしかったですね。そのベースがあって、『ポケモン』が96年だから、今年がちょうど20年目ですよね。

福田:そうですね。

近藤:当時10歳だった人は30歳になって、スマホを持ってる。そのカルチャーに・・・。

福田:完璧に合ったわけですね。

近藤:・・・完璧に乗ったんだと思います。だからほとんど大人ですよね、やってる人は。子どもは大人の後ですね。

20.ガリガリ君の新しいの出たら、僕は買いますよ

福田:僕もう15種類集めましたが、まだあと10倍ですよ。第2世代が始まっちゃったらどうしようと思ってますけどね。先週の金曜日、配信開始のときに、いち早くマスターするために、うちのスタッフを連れて、二人で銀座を2時間ぐらい歩いて、「このボタン何? このボタンは? こう? こう?」って全部やってみました。で、「ちょっと待って。早くレベル5になって対戦したいんで、この1万4800円の買ってください」って、30分ごとに香りをまき散らして・・・。

近藤:早い。大人買いですね、いきなり。

福田:「もうお金使って、時間の短縮だ」とかって言って、投げ方からボタンから全部マスターして。まあ仕事柄もあるかもしれませんけど、僕、スナップチャットでもなんでもやるんです。でも、TwitterとかFacebookを見てると、僕らの同年代の3割ぐらいは、『ポケモンGO』に批判的ですね。「あれの何が面白いの」とか、「そんな暇があったら、こうことに使え」とか。そういうことあまり言わないほうがいいと思うんですよ。まだ「イエーイ!」のほうがいいと。ちょっと出遅れでやっててもかわいいですよね。だけど「何があるの?」っていう大人にはなりたくないなって。

近藤:ジェラシーなんですよね。気持ちよく乗れちゃう人を見て、「俺は乗れないな」って・・・。

福田:人生、どっちでもいいんですよ、乗っても乗らなくても。でも、ガリガリ君の新しいの出たら、僕は買いますよ。新規事業の話も、たまたま自分は乗ったんですけど、乗らなかったらそのまま映画会社にいた可能性高いですよね。近藤さんも乗らなかったら、すっと広告代理店で営業やってた可能性あるよね

近藤:そうです。

福田:別に自分たちはイノベーターだって自慢するわけじゃないけど、たまたま人よりかちょっと好奇心が強かったから「『ポケモンGO』って何だろう」と楽しみに待ってた。

近藤:「あ、今日だっけ?」と気づいた途端すぐに、駅でダウンロードしてました。「よし、いた、いた、駅に」って。

福田:スタッフと2時間歩いてるときに、うまい具合に2人とも電源の減り方が同じで、「あと2パーしかありません」「僕も2パーしかない」「充電器持ってくるの忘れました」「チャージ、どうしよう」とか大騒ぎになったんです。で「1回タクシーで戻ろう、会社に」って引き返して「充電、充電、もう1回、もう1回」って。そいつが「福田さんがなんかバブルっぽいこと銀座でやると、その残り香でみんなもエンジョイしてますよ」って煽るので、「じゃあこのビルの中でやる? それもせこいしな」って。

近藤:そうですよね。

福田:どこでやるか論とかね。やっぱり、中年はゲームに詳しいやつとタッグを組んだほうがいいと思いますね。ボタンとか、そのレア感とか・・。

近藤:解説受けながらいけますからね。

福田:「これどうやって育てるの?」「あー、それはまだちょっと早いです」とかやりとりながら、「じゃあまずはレベル5まで」っていきなりやって。Facebookでちょっと上げるにしても「今どのぐらいのレベルで、何匹捕まえてるの?」って質問するんですよ。どれぐらいこれに対して真剣なのかと。業界人だったら、やっぱり対戦のところまでいかない限り、最初のトークは難しいだろうと。

近藤:なるほど。

21.「社長大丈夫ですか」と心配されそう

福田:きょう朝、社内で部門ごとの報告会があったんですが、「きょうの報告、数字とか見りゃ分かるので、みんな、『ポケモンGO』のレベルいくつで、何匹捕獲しているか、若い営業からちょっと言ってってよ」って聞いたら、「社長すいません、レベル15なんですけど」と返ってきて、「え? 15?」と驚きました。

近藤:15いってるんですか、もう。

福田:「この3日間で?」って確認したら、「はい、ただ土日歩いてただけなんですけど」って・・・。そうしたらその隣のやつも15、16いってたんですよ。「すいません」って。

近藤:本当に「すいません」レベルですよね、すごい。

福田:もうね、「よし、それでこそ、それでこそだぞ」って褒めてから、「後でレベルアップの方法教えてね」って頼んで(笑)。

近藤:今レベルいくつですか。もう5いってますか。

福田:僕6です。6で15個だったかな。

近藤:6。私まだ・・・4なんですよね。

福田:その難しいやつ取るのに、歌舞伎座の前で出てきたゴッドオブ何とかブレッシュだったか、なんか忘れましたけど、30発やっても取れなくて。

近藤:そんなのいるんですか。

福田:投げ方悪いみたいで、こう、閉じたときに投げるんですけど、プッと投げると、横にスライドするじゃないですか。ぎりぎりそこの対象の所まで伸ばすのがポイントなんですよ。

近藤:なるほど。

福田:偉そうに教えていますけど、若者から聞いたんです(笑)。その通りやったら、結構捕獲率高いですよ。

近藤:なるほど。

福田:でもそういう強いやつは、ガタガタ、ガタガタいいながら、捕まえた後、飛び立って行ったりするんですよ。逃げちゃう・・・。

近藤:なるほど。いや、私も社内でそういう会話をしたいんですけど、いないんですよね。逆に30代ぐらいの子に、なんかちょっと「社長大丈夫ですか」と心配されそうなので、1人で盛り上がってますからね。

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