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「アートを通じたファンドレイジングの可能性」世界ポリオデー・アートフォーラム 2016 (Art Forum 2016 in World Polio Day) Talked.jp

15世紀にヨーロッパ商人がパトロンとしてアーティストを支援したのが歴史の始まり

福田:僕が今、やってることが歴史的にどういう位置づけなのか、アカデミックな気持ちでうちのスタッフに調べてもらったんですよ。
まず、西洋、ヨーロッパから行きます。アメリカがまだ発見されていない時代まで遡ります。15世紀に民間のパトロンの方々が主体的に社会貢献したのが始まりだろうと。なんでかというと、この頃、商人がいっぱい出てきたのですが、貴族制度があって、幾らお金稼いでも貴族にはなれないわけですよ。
そこで、当時、商人は率先して税金を払ったんだそうですね。たくさん税金を払うと貢献できるっていうんで、みんな競って税金を払ったんですよ。それで図書館だとか病院だとか造られたっていうのが、調べる限り一番古い。

坂之上:その結果、貴族階級に近づけるから?

福田:貴族にはなれないんだけれども、たくさん税金を払うと、単なる商売人から、地元の名士に昇格できる。今でもそういうのありますよね。

坂之上:そうですね。

福田:このように社会貢献を競う社会構造は素晴らしかったと思うんですよ。
特に有名なのがメディチ家っていう、有名な一族ありますけれども、この方々はフィリッポ・ディ・セル・ブルネッレスコさんという、有名な建築家を援助しました。皆さんご覧になったものもあるかもしれませんけど、いっぱい教会を造った方なんですね。
教会っていうのは、当時は今よりも心の拠り所だったんです。メディチ家の方が発案して、このジョヴァンニさんにサン・ロレンツォ聖堂を設立してもらおうってなったときに、面白いことに、出資者のほとんどが一族の人なんですよ。メディチ家の一族ものすごく多かったんですけど、その2、3人の人が「じゃあお金出そうか」ってなったみたいです。
 同じような事例で、アンドレア・デ・パッツィという人がいます。このパッツィ家は歴史を調べると暗黒があったりするような一族なんですけどね、このかたがたも聖堂を造るのに「自分たちの一族の中でやろう」「じゃあ私やりますわ」と身内で賄っているんです。大体が閉じた世界ですね、貴族の世界は。

東大寺の大仏は
クラウドファンディングでできた!

東大寺の大仏

福田:みなさん、クリエイターがインターネットで少額の寄付を募るクラウドファンディングってご存じですよね。Makuakeだとか、READYFORとかありますけど。このクラウドファンディングって、アメリカから来たと思ってたら大間違いで、僕もびっくりしたんですけど、聖武天皇が発起人だったんですね。
聖武天皇のことを発起人なんて言ったら怒られるかもしれないですけど。当時、つまり8世紀ごろ、すごい干ばつがあったのがきっかけでした。つまりメディチ家よりもずっと前に、日本人は庶民から寄付受付をやってたんですよ・・・。

坂之上:つまり少額寄付を?

福田:そう。あまりにも干ばつとか飢饉とか疫病とかが起きるので、どうしようかとなったときに「勧進」と言って、お布施なんですけれども、「みんなでお布施を集めて大仏を造ろう、そして天の怒りを収めよう」と言って造ったのが東大寺の大仏だったんですよ。しかも、奈良新聞の調査によれば、260万人の人が参加して、4,657億円(現在価値)を集めたそうなんです。

坂之上:260万人ですか。つまり政府が出したわけじゃないってこと?

福田:聖武天皇の発案ではじまった。

坂之上:それ、まさに発起人ですよね。

福田:東大寺の大仏がクラウドファンディングでできてたなんて驚きました。だから、8世紀からやっていたのですからね。
 その後、明石志賀之助という方が神社の建築とか修繕をする目的で相撲の興行をやってたんですね。これがメディチ家に近い17世紀の話なので、日本はすごい早いですよね。日本の国技に目をつけ、勧進相撲っていうことで、木戸銭、寄付金を募った。一番いい席が、今の時価に換算にすると4,000円。升席よりかは安いですけど、当時でいったら大変な金額ですよね。これは円もちゃんと残ってるんですよ。結果としていくら集まったかは、いろいろ調べたんですけど、分かりませんでした。とにかく、こういうやり方で日本なりにやっていたということで、ここでまとめが来ちゃうんです。

坂之上:日本とヨーロッパの違い?

福田:歴史から見るアートと社会貢献の関係って何なのかっていうと、積善陰徳の思想というか、日本人はやっぱり自分を消して人知れずこつこつ、みんなで少しずつお金出し合って世界をよくしていこうよって、そういうコンセプトがあった。
西洋はあくまで個が確立しているんで、お金持ちのパトロンが社会に貢献するようなやり方。

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