ファンドレイジングの手法が多様化したことで、 アートをレベレッジしてやっていく時代になるかも
福田:最近のアートによる社会貢献のファンドレイジングについて。例えば、ルーブル美術館がいろんな美術品修理移転のためにこういうクラウドファンディングを使っているという事例があります。これも、例えば、政府が補助するとかいろんなやり方で違うと思うんですけれども・・・。
坂之上:今、日本ではやってるんですか?
福田:幾つかの地方の美術館はやってるんですけれども、
坂之上:例えば?
福田:地域を振興・復興させるために、例えば建物、図書館を造り直すためにお金を集めましょうとか、いや、これも悪くないんですよ。でも、何となくね、そもそも図書館ぐらい行政で造ってくれよっていうお話になっちゃうんで。
坂之上:あんまり盛り上がらない。
福田:盛り上がっても一部の人になっちゃう。ルーブルだと有名だし、建物修復だけじゃなく歴史的なアートを復元させようとか、歴史的な意義をうまく打ち出して、みんなが参加しやすいムードをかんを作ってる。これは大きいかなあと。当然、お金も集まりますよね。
「マラソンフォーボストン」っていうNPOがあるんですけど、2013年のボストンマラソンで悲劇的な爆破事故があった際、被害者の人たちに寄付するために、関係者が絵を描いて売ったんですね。いろいろ調べたんですけど、どれくらいお金集まったかわかりませんでした。
ただ、何か悲しいことがあったときに、こういうアクションができる時代になったんです。今までだったら「行政何とかしてください」で終わっていた。もちろん、今もそういうことあるかもしれませんけど、ファンドレイジングの手法が多様化したことで、アートを使って人やお金を集めることが普通の時代になるかもしれない。まだまだ事例は少ないんですよ。きょうはこういうテーマだからいろいろ探したんですけど、そんなにないんです。だから、セミナーを通じてこういうやり方があるのかって学んでくだされば、ありがたいです。
ロサンゼルス警察署が治安が悪くなった地域を回復させるためにいいアイデアないかっていうんで、その地域の住人の方たちが作ったアートを販売することで荒れた街を直したという事例があります。これも「本来行政の仕事だろう」って言われちゃいそうですが、それは20世紀型のデマンドなんですよ。そうじゃなくて、今、C to Cの時代、民間が民間を助ける、人が人を助けるっていう流れになってます。
坂之上:今までは「荒れている場所を何とかするために寄付してください」だったのを、「アートを買ってください」って持ちかけたところが新しいですよね。
福田:しかもそこに住んでる人のポートレートを描くっていう発想が面白い。しゃれたアーティストがかっこよくグラフィティー的に描いてくれるわけじゃないですか。そこになんか参加感もある。
坂之上:多分この町の人たちじゃなくて、外の人が買ってるんですよね。でもこれ日本で成立するかな?
福田:日本にはアートを自宅に飾る習慣がないじゃないですか。有名なポスターじゃなく、無名の一点物のアート作品を飾る様になってほしいですよね。こういうセンスが増えてくれば、こんな企画は日本でも成り立つと思うのですが。
被災地の漁師さんや商店街の店主さんなど 400名を描いてTEDプライズ賞を受賞!
福田:次の事例はJRさんっていうフランス人のアーティストの・・・。
坂之上:皆さん、知ってます? JR。イスラエルとか、パレスチナの・・・。
福田:難民の人を題材に素晴らしい作品を残すアーティストです。
坂之上:イスラエルとパレスチナ両方に描いたんですよね。反対の人の、普通の人の。
福田:大判でいい表情を撮って、それをパブリックアートみたいにその場所で掲示して、販売したものを寄付するという。アイデアだけで成立している非常に優れた事例です。被災した漁師さんや商店街の店主さんなど400名が参加してます。彼らのポートレイトーを撮って現地で掲示して、そのごギャラリへで販売しました。もちろん彼の絵はもともとバリューがあるんですね。この売上金を寄付したところTEDプライズ賞を取ったんです。別に賞を取ったからどうっていうことじゃなくて、こういう面白いことをやったことが社会が認め立っていう素晴らしい事例でした。
坂之上:影響力半端ないですよね。
ただ描いて展示するだけではく、 その過程を映画化して2000万円!
福田:次の事例は、言葉で聞くとなんちゅうことないんですよ、ブラジルの話なんですけどね、町がごみだらけなんですよ。近所にごみ屋敷の人がいるレベルなんです。後で2分ぐらい映像をお見せするんですけど、ヴィック・ムニーズさんっていう画家が、このごみを使ってアートを作ろうというね。
坂之上:アーティスト。
福田:ゴミを使ったアートってまああるんですが、これは規模がすごくて、ゴミでここまでのアート作れるのっていう凄いことですよね。しかも、このアートを作る過程をドキュメンタリーで撮ってたんですよ。その作品をオークションにかけて一つの現代アートの作品として落札したらなんと2000万円になってしまったと。「ワールド・ラージスト・トラッシュ・キャンプ」ってすごいゴミの町なんですよ。ここには未来がないです。でも、ゴミで暮らす人たちのポートレートをゴミで作っちゃったんですよ。そしたら巨大なアートになったんですよ。これで、いっぱい賞を取ったんですね。
坂之上:つまり、その作る過程でそこの人たちとつながってたということ。
福田:ですね。このアートの写真がオークションハウスにかかりまして、落札。これで2000万円。アイデアですね。ただ描いて展示しただけじゃお金になんないですけど、その過程をちゃんと映画化したところがすごい。メディアと連携させることによってムーブメントになったというのが・・・。
坂之上:だって、そこで1人作っても、誰にも知られなかったら・・・。
福田:「なんだ、ゴミを器用にアートにしたんだ」ぐらいの話ですよね。
坂之上:これ拡散されたでしょうね。
福田:すごい拡散されたんですよ。ゴミの山っていうと、日本人だったら、片付けようとか、きれいにするために税金使おうとか、そういう話になるんですけど、この企画は現状のまま見せていく。
坂之上:発想が違いますね。