しあわせになる仕事術

しあわせになる仕事術(後篇)

構成: 福田千鶴子
撮影:越間有紀子
日程:2017年4月18日

北川 拓也(写真左)

ハーバード大学卒業後、同大学院で物理学の博士課程を修了。理論物理学者として『Science』などに15本以上の論文を発表。楽天ではビッグデータおよびデータサイエンスの担当として、「データの価値は、金銭に置き換わっていない本質的価値の発見にある」という考えのもと、グループ全体のデータ活用を推進する組織や仕組み作りを統括。EC分野では商品データカタログの構築やデータを使った店舗支援のソリューション提供を行う。

福田 淳氏(写真右)

ソニー・デジタル エンタテインメント 社長
1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。

幸せは定常的に存在するのではなく、もっとダイナミックなもの

北川: 絶対ありますね。でも、その動物的な振れ幅が大きいということ、人間の振れ幅が大きいというのは、また階層が一つ違うのかなとも、今のお話聞いて思いました。やっぱり僕が興味があるのは人の成長なんですね。やっぱりこの100年、200年進化がないなと思ってしまう理由の一つが、人はどう変化するのかとか、どう学ぶのかとか、そういうことに関する理解ですよね。物足りないなと思います。例えば、幸せについて話をした時時も、結局フィードバックループじゃないですか。人って、いろんなことを飲み込んで、つらいこともいろいろ経験して、その上にこそ、幸せっていうのがある。幸せって、ある意味、ダイナミックなものだと思うんですね。ある数値測れてずっと定常的に存在するものではなくて、いろいろガーッと活動した上で生み出されるピーク点が幸せっていうものだと思うので、その時に幸せだったことも、ちょっとしたら、幸せではなくなることもあるわけじゃないですか。

福田: そうですね、ライブですよね。

北川: そうなんです。

福田: ライブラリーじゃないですよね。

北川: だから幸せに感じることそのものはすごくダイナミックで、かつイノベイティブなことだなと思った時に、じゃあ、それって人がどう学ぶかとか、どう変わるかとか、時にはちょっと不幸になったりとかいうことも含めてダイナミックな何かなのかなと思って。

福田: そうかもしれないね。幸せの定義が人によってあまりにも違い過ぎるから…。もちろん、いろいろあっていいのかもしれませんけど。 この間、役者の三浦友和さんの自伝を読んだんですよ。ある時から、芸能人の自伝って面白いなと思うようになって。普通の人の人生じゃないんですよ。何だかんだいって、身一つでやってるんですよね。三浦友和さんの自伝にも、いくつかポイントがあって、「子育てが終わって、奥さんの山口百恵さんが、そろそろ芸能活動に復帰するって言ったらどうしますか」って質問に「離婚します」と答えているんです。「え、そこまでする?」ってみんな普通に思いがちですが、「いや、そういう意味じゃないんです。もし彼女がそういう結論を出したとしたら、そんな思いを抱えた状態であることを知らなかった僕は彼女の夫である資格がない」と。この段階で「深いな、この自伝」って読み始めたら、最後のほうで幸せについての話になるんです。「あなたにとっての幸せはなんですか」という質問に、「9勝8敗だったら幸せな人生ってことにしています」と。だから、「人生楽ありゃ苦もあるさ」なんですけど、苦労があるからこそ幸せも感じられるって意味では、おっしゃる通り、絶対的な幸せってないんでしょうね、きっと。感じる瞬間的なものしかないから、だから幸せの理論って100あるのかなと。

北川: なるほどですね、やっぱり、すごい偉大ですね。

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