寄付は人間として自分が大事に思っていることを示す行為
河内山: ありがとうございます。概念を変えるっていう話になりましたが、それは「デザインする」ことなので、ソーシャルデザインになっているのかなと思いました。前に聞いたことなんですけど、某企業の人事過程のセキュリティーをやっている会社に勤めている人がリモートワークを推奨していると。「そんなことしたら会社に誰も来なくなる。どうやって管理するんだ? 家でPC開けて、その前にいるっていうセンサーを付けてやるのか」って聞いたら、「それは昭和の考えだ。そんなの別に管理する必要ない。いくらでも働いていいし、働かなくてもいい。要するに、この間までに仕事終わればいい。今後、成果仕様(主義?)に変わっていくから、成果をマネジメントするのがマネージャーの役目になり、成果を出せない人が社員として働きにいくという感じになるんじゃないか」とおっしゃっていたんです。確かに、会社なんてもう行かなくていいよ、みたいになる可能性も十分にあるんだなあと、ちょっと今・・・。
福田: 僕も会社の社長やっていて、それが完全できているかって課題もあるんですけど、ある種の社長って、「従業員の時間を買っている」という頭の構造の人が多いんですね。現況はどの会社でもそうなのかもしれません。でも、うちみたいなコンサルティング会社だと、実際はスタッフの人脈とかアイデア、その人のセンスを借りているんですね。そういうふうに考えると、別に200時間残業しようが1時間しか働かなくても業績に関係ないんですよね。
並河: 僕がよく思うのは、会社の基準というものはあるけど、でも同時に人間として自分が大事に思っている基準もあって、そちらに重きにおきながら、会社の基準も考慮するというか、両方を見ながら生きていくことが求められている気がしています。そういうときに、企業の人がNPOのお手伝いしたりとか、寄付したりって、それは実は人間としての自分の基準のところに、すごくプラスになる行為だったりするんじゃないかなあ、というふうに思ったりします。
ソーシャルデザインが創出する新しい雇用
福田: ほんとにそう思います。だから、自分を強くすることですよね。さっきの孫泰蔵さんのところはテクノロジスト集団だから、もともとモチベーション高いんですよ。言われても言われなくても、関心があるものについては取り掛かってくっていう前提があるから、全部食堂にしても、恐らく成り立つと思うんですけど、上司から何かテーマを与えられないとやらないという構造の中に自らを置いて、それに慣れちゃうと、多分20世紀的なままになっちゃう。
例えば、いろんなNPOの中に、第三国の労働を増やしましょうっていうテーマのもの、すごく多いんですけど、それは実はまあまあ日本人得意なんですね、20世紀的だから。自分たちがやった20世紀の概念を、そのまま適用すればいいんですけど、その一方で、UberとかAirbnbみたいなセンスのものを、アフリカの第三国で、うまいシステムでやったら、雇用がものすごく生まれるんじゃないかって思うんです。ただ、自分たちがわかってないと、やっぱり発想として湧きませんよね。
実は先月、上海に行ったのですが、「だいぶ空気が良くなってたてきた」っていうんですよね。「なんで?」って聞いたら、MOBIKE(モバイク)っていう、スマホで管理できる、Uberの自転車版が、そこら中にあるんです。むちゃくちゃな分量で自転車が置いてあるんですよ。みんな飲み会が終わると、スマホで鍵をカチャっと外して、どこでも乗り捨て自由なんです。でも、これ、日本だとたぶん無理です。渋谷区から千代田区に行っただけで、千代田区に怒られるとか、いろんなことあると思うので・・。
並河: 資金調達すごいしたって・・・。
福田: US$250M。100円換算で、250億円ですね。
並河: 話題になりましたよね。
福田: 環境も良くなるし、運動にもなるし、これはもう最高にいいんじゃないかと。こういうムーブメントを生むセンス、これがソーシャルデザインなだと思いのます。
河内山: はい。ありがとうございます。それでは時間にもなりましたので、お二人に盛大な拍手をお願いします。
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ソーシャルデザイン入門~「自分のため」から「社会のため」へ。多様化する価値観にどう伝えていくか~【前編】