お金の質を変えるのが「音楽」
橘川:僕はもともと『ロッキング・オン』を始めたときから、組織じゃないわけです。会社員じゃない。だからといって個人でもなくて、「僕らはバンドだ」と思っていた。
福田:面白いですね。そんな風に僕は思ったことなかったなぁ、やっぱり。
橘川:バンドって、リーダーはいるけど、一応同等なんですよ。僕は原点がロックだったわけです。すべて、ロックなんです。
福田:そうか。その元体験は大きいですね。僕は東北新社からのスタートでしたから、ロックじゃなくて、中央集権ですよ。
橘川:でも、組織はバンドだしね。ビジネスはロック。つまり、音楽なんですよ。だから、音楽しかできなくて。音楽って、なくてもいいものなんです。死にやしないんですよ。他のものはなきゃ困るけど。だけど、そういう音楽というものに、お金払ってくれる人がいるわけですよね。これが僕、一番きれいなお金だと思う。
福田:本当ですね。
橘川:メリットで買うわけじゃなくて。言ってみれば、音楽はすべて投げ銭なんですよ。こいつにもっといい音楽やらせたいからCDを買う。単純にCD1枚の価格じゃない。
福田:そこにいびつな形で大人が入っちゃうと、「CD100枚買って、林に捨てちゃう」みたいなことが起きるけど、根本的にあるのは愛ですよね。
橘川:そうなんですよ。だから音楽というのは、お金の質を変えてるわけです。だから、僕は「ロックってすごい」と思ったの。
福田:音楽はお金の質を変えてるっていうのは、面白いですね。でも、今後お金の質を変えるようなことがいっぱい起きないと、本当に『暇つぶしの時代』は来ないですね。 この間、三浦友和さんの自伝を読んだんです。自伝っていったってまだあの方は若いですけども、『死んだときにプラマイで、プラが1だったら幸せだっていうことにしています』って。そういう考えにたどり着いた芸能生活ってのは、きっとすさまじいものがあったんでしょうね。サラリーマンだとやっぱり、出世だとか、いくらお金を残したとか、そういう単純なことで評価されてきたから。幸せを考える仕様が、これからはもっと多様になるんでしょうね。