強い言葉が社会を動かす
福田:日本は、文(ふみ)文化だから、コピーが多いじゃないですか。でも欧米の広告はビジュアル重視というか。ビジュアルのほうが多いですよね。
こやま:多民族国家の場合、あまり言葉を使いすぎると伝わりにくいから、というのは聞いたことがありますね。
福田:たとえば、こやまさんの代表作であるプラン・インターナショナル・ジャパンの「Because I am a Girl」キャンペーンの広告は、日本語がまったくわからない人が見たら、普通にインドの観光案内と思うかもしれませんね。
こやま:たしかに、そうですね。
福田:乱暴な言い方ですが、ときにビジュアルは、コピーのための「添え物」的なケースってあるんですか。
こやま:「Because I am a Girl」の広告は、予算も限られていた関係で撮影は出来なくて、プラン・インターナショナルが持っているストックの中から探すしかない仕事だったんですね。だから言葉を先に決めて、それに合う写真を探してもらう、という作り方だったんですよ。
福田:そうだったんですか。だから、写真を説明している言葉ではない。本当はイメージ図みたいな話ですよね。それが、なんだか日本独特な気がして。
こやま:そっか。たしかに外資の広告は、「どんな絵、ビジュアルにしようか」とか、そこから始まりますね。
福田:江戸川学園おおたかの森専門学校(EDOSEN)の広告も、非常に言葉が強かったですね。「この国に、いちばん必要な仕事が、いちばん足りていない。」という。
こやま:ありがとうございます。
福田:コピーライティングを通じて、世の中を変えられる可能性はもちろんあるし、そういう事例もたくさんあると思うんです。こやまさんのお仕事は、そういうことの指向性が高いように思えるんですが。
こやま:はい。「そういう仕事をしたい」という気持ちは、とても強いですね。
福田:その気持ちは、どこから来るんでしょう。世の中の役に立ちたいというような。
こやま:おそらくそれも、自分の欲求だと思うんですよ。「そういう仕事のほうが、メッセージが立って、コピーが必要とされる」という。ちょっと自己中な気持ちだと思うんですよね。「自分の言葉一つによって、すごく効く」、そういう仕事がしたいなと。
「Because I am a Girl」の広告などはとくに、コピーが弱いと全然反応がないし、資料請求も全然電話がかからないし。でも、ちょっと強いコピーになると、電話もたくさんかかってくるとか、そういう差が出やすいんですよ。だから、そういう仕事のほうが好きなんでしょうね。
福田:「強い言葉を選ぶ」っていう表現が正しいかどうか分からないですけど、そういう言葉が出たときの達成感がすごく強いんですね。
こやま:そうですね。強い言葉を置く意味があるというか。中には「強い言葉なんか、なくてもいい」っていうブランディングもあると思うんですよ。ビジュアルが面白いCMの企画とか。でも、「言葉が一番大事」という、そういう仕事をやりたいという自分の欲求なんですね。たぶん。