一周回って、「言葉の時代」はキテいる!
福田:こやまさんにとって「強い言葉」とは、どういう定義になるんですか。
こやま:「人の心が動く」ということですね。ハッとさせるとか。
福田:前述の江戸川学園おおたかの森専門学校(EDOSEN)の、もう一つのコピー「もう介護や保育を、愛のせいにしてはいけないと思った。」も、強い言葉でしたね。
こやま:あのコピーは、「銀木犀」というサービス付き高齢者住宅(*2)のオーナーの方に取材をさせていただいた時に、出てきた言葉なんです。
福田:そうだったんですか。
こやま:一般的な介護施設では、お年寄りを子ども扱いするようなことがありがちですが、銀木犀では人格を尊重されているんですね。床も、「汚れてもいいようにビニールの床に」という考え方ではなくて、無垢の木の床材で素敵なんです。窓も開け放していて、閉じ込めない。そういう環境にいると、かえって徘徊も少なくなるらしいんですよ。
そういう素敵な環境にいて、家族も多少距離を置いて、たまに会いに来るぐらいのほうが、家族関係も良くなるというお話もあって。「近すぎるから、逆につらいんだな」と思ったことが、あのコピーにつながっています。
福田:実際に取材に行かれて、リアルな現場の話を聞きながら、強い言葉につなげていくんですね。
こやま:割とそうですね。銀木犀さんの取材は、また違うプロジェクトだったんですけど、その活動をやっている中でEDOSENのお仕事を頂いて。でもその取材があったから書けたというのはあると思います。全然知らないと浅いことしか書けないし、人の話を聞いたほうがインスパイアされるし、コピーが深まるので。
私はクライアントさんのお話を聞くのがとても好きなので、福田さんはそういうお仕事をよく下さるから、ありがたいです。自分の肥やしになるし、また次の仕事にも役に立っている気がします
福田:机の上でひとりで考えているよりも、いろんな人の話を聞いたほうが強い言葉は降りてくる。
こやま:と、思いますね。もちろんそれも自分の中を通らないと、本当に強い言葉にはならないと思うんですけど。人の言葉が自分の中を通って、いい言葉になるのが、一番いいパターンなのかなと。
福田:SNS文化の台頭でみんな本を読まなくなったとか、「総ばか時代」みたいな感じもするんですよね。古いと言われるかもしれませんけど、言葉の持つ力の復権のためにコピーライターっていう職業がある。そのことが、今一度注目されるべきと言いたいです。
こやま:そうですよね。じつは、「言葉の時代」はきている気はしています。広告業界だけが遅れているんじゃないかと個人的には思っているんですけどね。SNSでも言葉を書く人は多いですし。広告業界は、「もうコピーライターなんて古いよ」みたいにいうけど、その広告業界が古いんじゃないかっていうふうに言っていこうかなって。
福田:言っていくべき! ですね。
(*2)千葉県を中心とした、介護職員24時間常駐の要介護高齢者向け住宅。 http://www.ginmokusei.net