学校という場所では、 商品が悪くても「前払い」が成立する
福田:理事長が学生を「クライアント」と呼ばれる、その経営感覚が素晴らしいと思います。僕のような民間の会社を経営している立場と、学校経営との共通点はあるのでしょうか。
岡本:学校経営というのは、一般企業からみると、かなり特殊だと思います。
福田:そうなんですか。
岡本:一般的な商売、ビジネスの場合は、商品となる製品が評価されることで、お金がもらえますよね。でも学校経営の場合は、最初にお金をもらえてしまうわけです。
福田:たしかに、前払いですね。
岡本:そう。しかも商品が悪くても「先に払ったものを返せ」と言われることはほとんどない。だから私学の場合はとくに、教員はそのからくりをしっかりと理解しなければいけません。なぜ先にお金を払ってもらえるのか。自分は、それに値する教員なのかということを、常に自問自答しなければなりませんね。
福田:たしかに、そうかもしれません。でもそんな株式会社みたいな観念で経営をしている学校は、正直あまりない印象ですが……。
岡本:教育に関わる人間は、みんな最初は考えていると思いますが、だんだん忘れてしまうんですよ。そもそも、こんなありがたいことはないのに。先にお金を支払っていただくわけですから。
福田:そうですね。それだけの信頼と実績と、ブランド力ということですよね。加えて、学校というのは知の塊ですし。
岡本:「学校の先生は悪いことはしない」とか、肩書だけでそれなりの社会的評価があるとか、そしてなんといっても前払いでしょう。やっぱり学校経営は特殊な経営といえるでしょうね。