キュレーションメディアならではの戦略
福田:成瀬さんとのお付き合いは、もう5、6年になりますね。初めてお会いした時は、TABI LABOの共同経営者をされていて。
成瀬:そうですね。当時はTABI LABOを創業したばかりでした。2013年の5月に拙著『自分の仕事をつくる旅』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を出版した同じタイミングで、TABI LABOをリリースしたんですがその時でしたね。
福田:TABI LABOは、キュレーションメディアの先駆けでしたね。競合メディアはあったんですか?>
成瀬:リリースの一番最初のタイミングは国内には競合はあまりなく、海外が多かったです。例えば、キュレーション系ニュースサイトのアップワージー(*1)とか、オンラインメディアのバズフィードとか。バズフィードも、当時はまだ日本版はなかったですね。
福田:その頃、キュレーションメディアが出始めた背景って何だったんでしょう。SNSだって前からあったわけですけど。
成瀬:「SNSを使って、多くの人に情報を拡散していく」みたいな概念自体、当時は一般的ではなかったのかもしれませんね。
福田:SNSは個人の交流だけで、そこにコンテンツがシェアされるようなことはまだあまりなかった、と。
成瀬:そういう意味では、当時僕はアップワージーがいちばん面白いと思って見ていました。どうやってソーシャル上で記事を拡散していくのか、みたいなことも研究していましたね。たとえば1つの記事の作るために、アップワージーではタイトルを25個ぐらい作っていたそうなんです。あとFacebook上で流れるアイキャッチ写真も、そのタイトルと合わせて、いくつもクリエイティブを作って変えていくとか。それだけで、ページのビュー数が100倍くらい変わってくるので。
福田:そういう、「キュレーションメディアならではのセオリー」というのは、いまではもう確立されているのですか。
成瀬:幾つかあると思います。例えばタイトルや見出しに、「ハリネズミとホームレス」みたいな、意外なワードを組み合わせるとか。よく分からないけど、ちょっと気になるじゃないですか。
福田:キャッチーなタイトルを見つけるのが大切という。
成瀬:はい。ただしキャッチーなだけでは、「期待して読んだのに中身、全然ない」ということになるおそれもあります。それでは信用問題に関わるので、その解決策として、前述のアップワージーがした結論が「取りあえずタイトルを25個出す」。それを義務付けることで、編集部員はそこに対して深掘りすると同時に、「24個目までは微妙かもしれないけど、25個目にはすごい答えが出るんだ」みたいな、数を出すことによって質を担保するという戦略をしていて。
僕らもそれを導入していました。とにかく夜中もみんなで集まってタイトルを出していて。
(*1)2012年3月に設立されたリベラル系オンラインニュースサイト。「Upworthy」(アップワーシー)とは、 UpとWorthy(価値のある)を掛け合わせた造語。開設後14ヵ月で月間ユニークユーザー数が3000万人を超えたことが話題となった。