デザインの歴史からみた「ブランド」
福田:僕、今パワポがなくて話してるんで、どんどんどんどん本題と変わってくるんですけど(笑)
坂井:もう一回、戻ります?(笑)
福田:ですね。で、今日のテーマの『デザイン経営時代のブランディング』ってことなんですけれども。ブランディングもデザイン経営という言葉も、ちょっと流行り過ぎた感がありますね。そのせいか、「何をしたらいいんだ」っていう経営者も多い。従来型の収支であるとか、売り上げを上げるとか、在庫管理とか、サプライチェーンのモデルとかある中で、このブランディングって、何だかふわふわしているというか。
坂井:ブランディングとは何かを探るために、ちょっとデザインの話に戻りましょうか。デザインは、どれぐらい歴史があるか、皆さんご存知ですか。これ聞くと、意外と「えっ」ってなるんですけども。
ドイツに「バウハウス」というデザインの学校があって、ヒットラーが潰したんですが、これが約100年前に誕生しているんですね。産業革命が160年ぐらい前ですよね。なのでこの辺が、デザインが発生した時期だといわれています。それまではデザインはなかったのかというと、そうではなくて、デザインの定義っていうのは、「100万個全く同じものを作る」ということなんですね。石とか木とか自然物を使うと、全く同じものにならないので、プラスチックだとかアルミになったりするわけですよね。
福田:たしかにそうですね。
坂井:そのバウハウスをヒットラーが潰した時に、何名かのメンターはアメリカの東海岸に逃げたんですよ。ボストンとかシカゴとかその辺に逃げたわけですね。それまで、ドイツだけが独占的に持っていたデザインというスキルを、世界中に拡散するきっかけになったのがその事件なんです。100年前にデザインが誕生していたドイツという国は、いまだにアウディにしてもメルセデスにしてもBMにしても、負けていないんですけども。
一方、ヨーロッパに残ったメンターたちもいて、その連中がどういうふうにデザインを考えていたかというと、「ブランドを作るためにデザインというツールがある」と考えた。その結果として有名なラグジュアリーブランドの多くはEUにあります。アメリカに行ったメンターがデザインをどう考えたかというと、それはアメリカの資本主義にやられて、「デザインは商品で、消費財だ」と。だから売れるものをバンバン作っていきゃいいんだっていう。
福田:デザインが使い捨てだっていうのは、面白いですね。
坂井:そうなんです。だから、いまだにヨーロッパに世界のブランドの大半がある。でもブランドって、じつはコモディティーブランドはどこにでもあるから、その言い方もおかしいんだけど、ラグジュアリーブランドに関してはヨーロッパが主流になっていると。
福田:今の話で、ブランドの語源を思い出しました。19世紀に豚を飼っていた人が、隣の農家の豚と自分の豚が分かるように、焼き印を押すという「バーンド」がブランドの由来になった、というお話でしたよね。
坂井:そういう説がありますね。
福田:そこだけを見ると、20~30年前の「CIブーム」ってありましたけども。電通なんか、「エクセレントオブ電通」っていって。エクセレントオブ電通ですから、「CED(Communications Excellence Dentsuの略)」とかって、略されたものが電通より大きいマークで掲げられた時代があったんですよ。「さすが電通だ」っていうことでCIブームが起きて。銀行でも看板を替えるだけで、結構な看板屋さんの受注があるので、「看板替えるのがブランディングだ」なんて言われた時期がありました。すぐにそうじゃないなってバレちゃったんですけど。あれから長く低迷して、やっと今「デザイン経営」ですよ。
(後篇へ続く)