「国に守られない人」を、どうエンパワーするか
福田:この世界に「笑うこともできないような人がいる」と知ったのは、僕は40歳過ぎてからなんです。普通のビジネスマンの家庭に生まれ育ったので全然わからなかった。でも、大阪でホームレス就労支援団体Homedoor(ホームドア)の理事長をやっている川口加奈さんと知り合ったとき、彼女の「(そういう人たちがいるということを)知ったからには、知ったなりの責任がある」という言葉がすごく刺さったんですよ。そこからいろんなNPOの活動するようになって。
渡部:加奈さん、じつは昔からの友人です。なので福田さんとの対談も拝見しました。
福田:そうなんですか! 加奈さんとの出会いなどもあって、昨年僕は「アシャンテママ」っていうNPOの代表になったんですね。貧困や病気に苦しむモザンビークの子どもたち救う団体なんですけども。
渡部:そういう、自分の中のハッとする人に出会う年齢って、多分人によって違いますよね。
福田:そうかも。いろんな人に会って、その時々にハッとするんですけどね、
渡部:社会問題に出会うというよりは、誰か1人に出会って、そこからいろんな問題を知ってくほうが多い気がします。
福田:就職なんかでも、僕の時代は「あの会社入りたい」とかっていうのが先にきていました。でも今は働いている会社に素晴らしい上司や好きな先輩がいたら、もうそれが働くことの全ての基準になりますよね。 渡部さんの場合は、ご実家の環境や、学生時代のバングラデシュでの経験が、現在の難民支援団体WELgeeにつながった、ということでしょうか。
渡部:そうですね。あと私は、「人の移動」にいちばん興味があったんです。とくに、国家を失った人や国に戻ることが出来ない人が、「じゃあ、この世界でどうやって生きていくんだろう?」というところに強い関心があるんです。「国は自分を守ってくれる」という、日本に生まれ育った私たちが当たり前に持っている前提とは、全く違う人たちがいる。国家が守ることのできない国民がいて、さらに国自身が、自分たちを殺してくる。そういう人たちは国を出た瞬間に行き場がなくなって、「難民」という名称に押し込まれて、自由が奪われてしまう……。国連も頑張っているけれど、そこには国際法や基準から外れてしまう人たちもいるんですよね。だからWELgeeでは、国家に守ってもらうことのできない人を、民間がどう発掘し、どうエンパワーできるんだろうっていう主旨で活動をしています。