日本は「強いパスポートランキング1位」
福田:渡部さんが言うところの、「国が守ってくれない人」っていうのを聞いて、今すごく自分の立ち位置にモヤモヤしています。自分がこの日本という国に税金を払うようになってから、「お前は日本人なんだよ」ってことになります。その一方的な国への帰属に対して反発心があったのですが、一方では居ることを許されている。この居心地の悪さ。
渡部:たしかに。
福田:自営業の方は自分で税金を払うプロセスがありますけども。殆どのサラリーマンにとって納税者って、企業だったりするじゃないですか。個人が国に払うのではなく、企業が給与からトップオフして国に収めている。だから、人々に政治への参加感がないのかな。
昔、戦後の本とか読むと、中国の詩人の杜甫が詠んだ句に、「国破れて山河あり」ってありますけども。国が破れたと。でも山河はあり、自然があると。本来、国の概念ってそれだけの話なんですよね。
たまたま日本は島国だから、国境っぽい感じはありますけど、何でその国の住民なんだと決められちゃったんでしょうね。どの国なのかっていうチョイスがないことが、こんなに人を不幸にしているのかと思います。国境ってなんだって、もう一回考えちゃうよね。
渡部:国境を意識することない時代ですからね。私たちは日本のパスポートがこんなに強いことも意識していないし、普通に旅行に行くときに出していただけだったし。アフガニスタンから逃げてきた人は、日本のビザが全然出ないから、直接入れなかったそうなんですね。だからアフガニスタン人にとっては、日本に行くなんて夢のまた夢で。
福田:日本のパスポートは強いんですか?
渡部:この間また、「強いパスポートランキング1位」になったんです。日本のパスポート保持者がビザなしで渡航できる国や地域は、2018年10月1日にミャンマーが加わって合計190カ国です。
福田:そうなんですか。だけど、日本人は全然、海外に出ないというね。多様な価値観って言うけど、本当に実際の経験が大事なんですよね。
僕、世界中に友達がいて、みんなが東京に来るときはいろいろアテンドしたりすること多いんですけど。みんな旅の話をするんですよね。でも、今旅の話ができる日本人って、少ないです。でも海外の人ってむちゃくちゃ世界各地に行ってるから、地域の話もその国の政治の話も、みんなできる。一方の日本人は、ほぼこの会話ができない。だから「日本人は、普段一体何を話しているんだろう」と疑問に思うことがあります。つまり旅に行くってことは、自分はその国では外人だから、繊細にならざるを得ないんですよね。軍用車が横を走っていても、何をしていても。まずはその国のことを知らないと。
渡部:パスポート保持率も低いですよね。
福田:何せ「4人に1人」という低さですから。
渡部:もし私がイラクに生まれていたら、二十何カ国くらいしか、ビザなしで行けないらしいんですね。留学に行こうと思っても、インターナショナルのサミットに応募して通っても、「あなたはダメです」って言われてしまう。国で大勢殺されているから出ようと思っても、どの種類のビザも出ませんとか。
パスポートの話に戻るんですけど、そういう「当たり前にあるもの」と思っていたことって、外の世界と接しないと分からないですよね。だとしたら、難民に否定的な人を責めたりするよりも、「日本に難民っているの?」っていうところから始まる人のほうが多いので、その人たちと一緒に可能性を考えた方が、ずっといいだろうなと。
(後篇へ続く)