夫婦関係は28年目に 「パンドラの箱」が開く
福田:世の中には中学の同級生と結婚して、子どもが生まれて…っていう方っていますよね。人間、いろんな人を知ってしまうとムダに比較が生じちゃうから、男女の関係ってますます難しくなるんじゃないかなと。よく考えたら、ピュアに「1人しか知らない」という方がいいんじゃないかなと思います。「他がある」と思うから、浮気が発生するんじゃないでしょうか。
黒川:一夫一婦制は、税金を取りっぱぐれないようにしている社会制度であって、脳の本来の仕組みには逆らってますよね。生殖の仕組みから言えば、浮気は、多彩な遺伝子ミックスを残そうとする脳の生殖本能の一部。もちろん、最初の一人の遺伝子に大満足して、他に目が向かないという奇跡のようなカップルだっていると思うけど…。古代の日本は、多夫多婦制でしたからね。
福田:モラルの問題はともかく、本来は、人間も動物の一種であるならば、多夫多婦制でよかったんですよね。
黒川:そう。みんな好きなように発情する相手と子どもを作って育てて、子ども自身は女系で。「私が産んだら私の子であることは間違いないから女系だ」っていう。あれが脳科学的には一番、自然なかたちですね。
福田:逆にいえば、今は脳的に自然な状態にない社会だから、いろんなルールの中で不自然なことをやってしまうということですね。
黒川:これは私の持論ですが、夫婦というのは「男と女の7年」の次に、「戦友であり宿敵である7年」があり、次が「無関心といらつき、ゆらぎの7年」だと思っていて。
福田:第3フェーズ、ちょっとつらいですね(笑)
黒川:そう。第3フェーズがちょっとつらいんですよ。でも第4フェーズというのがあってですね。そこが「くされ縁」です。
福田:もう諦めの境地なんでしょうか…。
黒川:結婚って、実は28年を過ぎた頃から、皆さん変わってくるんですよ。
福田:え、ついに、”愛”なのでしょうか?
黒川:あえて言えば”人間愛”なんですけど。「あうんの呼吸期」に入ってくるんですよね。「男と女の7年」を経て、戦友と宿敵の時期は、例えば共働き夫婦だとしたら、本当に戦友ですよね。けれど本人たちも家庭の中で真剣にけんかして、相手に無関心だったり、無関心であることに恨んだりして、本当にくされ縁になるんじゃないですか。この「くされ縁の7年」が熟年離婚期に当たるんですけど、その果てに「この人、かわいい」っていう気持ちが生まれてくるんですよ。それが「あうんの呼吸期」です。
福田:しょうがないわね、みたいな感じですか。
黒川:そうです。私、だから夫婦は「パンドラの箱だな」と思う。あらゆる災厄が出た後に、希望がふわりと飛ぶ、あの箱。夫婦はパンドラの箱で、希望が出るまでに28年は絶対にかかるんですよ。
福田:長いなぁ(笑)パンドラの箱を開けた人にしか分からないなんて! チベット僧の修行のようですね。それでいうとアメリカ人は合理的だなと思うんです。「もうムリ、別れる」みたいなことが、社会的に認知されている。時間軸は別として事実上 “多夫多妻”みたいになっていますよね。
黒川:一夫一婦制の中で屈服するなら、その道もありですよね。フランスで長く暮らした友人が、お隣の奥さんは「愛人と夫と息子を3人仲良く車に乗せて、通勤先まで送っていく」って驚いてましたけど、男女関係が成熟していますよね(笑)