脳の認識フレームが多いと、 物事に「気づきすぎる」
福田:ここまでのお話でいうと、黒川さんは、ご姉弟の名前の語感から今に至るまで「気づき過ぎちゃう方」なんでしょうね。
黒川:はい。実は私は、自閉症スペクトラムなんです。ミラー・ニューロン過活性で、結果、認識点が人より多いんですよ。小さな頃は光とか音があふれていて、どうしていいか分かりませんでした。だからおっしゃる通り、「気付き過ぎちゃう」ということですね。今でもちょっと、人よりも認識点が多い場所があるんです。そのおかげで多分、こういう研究をやっているんだと思います。
福田:直感人間というか、気が付いちゃう。だからアーティスティックなのに、そういうビジネスのセンスの第一線にいらっしゃるところがユニークなのかもしれませんね。黒川さんのような方は、企業にはあまりいないかもしれません。
黒川:そう、企業にいられなかったです。
福田:先日、橘川幸夫さんという編集者でメディアプロデューサーの方のお話が面白かったんです。「今、人生100年時代でライフシフトだから」って、会社を早期退職しちゃう人が出てきているんですって。でもいくら退職金があっても何ともならなくて、いざリタイアしても何をしていいか分からないらしいんです。だから橘川さんはそういう人を集めて授業をやってらっしゃるんですが、まず「いい加減、社会人気分は捨ててくださいね。会社を辞めたら、誰も次にやることは教えてくれませんから」って教えるそうです。かつて新入社員だったときは先輩に、「いい加減に学生気分を捨てろ!」って言われたのに(笑)
考えてみたら40年間サラリーマンをやっていた人は、つねに会社から「じゃあ来月までにこの売上出して」とか「3カ年計画考えて」とか、ずっと課題を与えられていたんですよね。だから、自分からテーマを作ることができない。リーダーって100人いらないと思うんですけども、サラリーマンでフォロワーであるということは、非常にプロフェッショナリズムがあると思います。だから「人生100年時代だから、会社辞めて独り立ちして生きていけ」という強迫観念を植え付けられても、みんながみんな乗らないほうがいいんじゃないかなと思います。自分の特性を見極めて生きていけばいいのです。
黒川:そうですよね。結局、脳の特性ってあると思うんですよ。私も出来たらエリートになって、大きな組織で出世したかったですよ(笑)