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「今」を紐解くために ~ テクノロジーの歴史を振り返る①

デザイン経営時代のブランディング アートが変える新元号の社会

次の3つ目のポイントは、答えがパッと出にくいものなんですね。その答えをお伝えするために、まず「人類の歴史と未来」という、急に壮大な話になってしまうんですが、しばしおつきあいください(笑)。

原始時代って、その日の食料を探すだけで一日が終わっていました。コミックの『はじめ人間ギャートルズ』でも、マンモスを捕獲したら保存したりして、エンターテインメントっていってもきっと、お酒を飲むぐらいでしたよね。もちろん壁画なんかはいっぱい残っていますけども。人間の一日は、今も原始時代も変わりません。それがどのように変化していったのかという歴史の流れの中に、3つ目のポイントが潜んでいるように思います。

 過去、さまざまなテクノロジーの変化が人間の歴史を変えてきました。ハードとソフト、どちらが先だったのか。これは最初にテクノロジーのイノベーションが起こって、そのハードに対してどういうソフトが生まれたのか、という順番だと考えています。農業革命があり、食の安定がもたらされ、産業革命で、大量生産か可能となり、その結果安定した住環境が整いました。そして今、僕たちは偶然、インターネット革命の時代に生まれてきちゃったんですね。本当にたまたま。
僕は今53歳ですが、これまでのサラリーマン人生の半分ぐらいは、職場にパソコンはありませんでした。あの頃、一体どうやって仕事していたんでしょうね? でも、生産性はさほど変わらないんですよ。インターネットの前と後で、日本のGDPが倍になったかというと、そんなことないです。日本の場合、下がってる。インターネットで便利になって効率的になったといっても、別に生産性は上がっていないです。むしろ、働き過ぎのせいで別の意味での生産性が落ちて、状況はあまり変わらないんないじゃないかというのが、昨今置かれた状況だと思うんです。ただ、そういった新しいテクノロジーの進化を、僕たちはどう生かしていくか。それが今日、みなさんと一緒に考えるポイントなのかなと思います。

 具体的な数字でいいますと、農業革命の頃、アメリカの1800年ちょうどの段階で、北米には農業従事者が約90パーセントいました。ジェリー・カプラン氏というスタンフォード大学の先生の調べによると、正確には87パーセントだったと思うんですけども、2000年になると1.7パーセントです。これは、農業従事者がみんな突然職を失ったわけではなくて、200年の時間をかけて減ってきたということです。つまり、別の仕事へとシフトしていったんですね。
 さらに、いろんなイノベーションを振り返ると、高速道路や新幹線、飛行機もそうですね。移動手段が便利になったその代わりに、途中の風景やらコミュニティーやらがなくなっていきました。シャッターストリートなんていうのも、工業化の弊害ですよね。何でもAmazonで買うようになれば、商店街などの町が空洞化すると言われていますが、恐らく僕らは、もう次のイノベーションを考えなければいけないんでしょうね。そういった変化が起きている。これが、「良い悪い」ではない歴史の変化で、その前提を皆さんと共有したいなと思いました。

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