これから残る仕事は何か
ここまで考えたときに、僕はこれからの人間の仕事は、次の三つだけになるんじゃないかと思っています。
1つ目は、「人を助ける」こと。アメリカの寄付マーケットは30兆円(2016年)に対して、日本は8千億円弱。
日本ではNPO/NGOというと、とかく清貧なイメージでお金が集まらないし、税制もよくない。僕もいくつかの日本のNPOに関わっているので、これからはどんどんそういう問題を変えていきたいと思います。貧しい人を助けるのに、自分も貧しい必要はないんです。むしろ逆で経済的にも精神的にも余裕がないと人助けできないと思いませんか? あと、これはまあ蛇足ですけど、アメリカでは、株式会社よりNPO/NGO組織の方が格が上です。当たり前ですが、それくらい金儲けより人助けの方が社会的地位も高い。長く良いサービスで儲けている企業は必ず大きな社会的使命をもっています。だから、日本のNPO/NGOは逆にお金儲けの構造を理解し、より大きな社会インパクトを与えるようにならなければいけないのです。
人を助けるという仕事は、たとえAIが進化しようと、どう効率化しようと、人と人がいる限り絶対にある。この業界は今後、日本でも大きなマーケットにつながります。
2つ目は、皆さんにも関わってくると思うんですけど、「遊ぶこと」です。アート、旅、ゲーム。つまり、余暇をどう使っていくかというマーケットが飛躍的に伸びると思います。だから皆さんのように、アートに関わりがある方々は、ものすごくポテンシャルがあると言えるのではないでしょうか。せっかく働き方改革で残業減っても、余暇の使い方しらないと、まったく人生を楽しむことができない。ゲームもいんですが、そればっかりだと人生寂しいですよ。人とたくさん関わり、混じり合うことで人生は豊かになるのではないでしょうか。そういう意味では島国で閉鎖的になりがちな日本人ほどもっと旅をした方が良さそうですね。
3つ目は、「考えること」。なぜかというと、AIは勝手には考えないんですよ。ターミネーターとか見ちゃうとAIも勝手に考える自立型ロボットみたいに捉えがちです。でも実際は、ある前提(データセットという)を与えパターンを覚えこませ、そのメールを見極め、そこからは自分で考えられるようになる、というものです。例えば経営者が「ある顧客が店に3回来店したら、その人にはロボットが”ありがとうございます”と言おう」と決めた時点で、来店されるお客様の姿形を認識させ、贔屓筋を見極めサービスに応用させます。その前提に与え方が良いとその後の応用も良くなるし逆にもなるわけです。結局は人がどういうテーマをAIに求めるかが大事なんです。
AI以前から、人はテクノロジーに対して夢とテーマを与えて考えて、それを実現させてきた歴史の積み重ねの中に生きています。ですから「考えること」は、どんなテクノロジーよりもはるかに複雑で難しい人間的な仕事として残る筈なんです。
この3つの仕事以外は、自動化されたプログラムや機械、ロボット、ドローンで効率化にこなす未来が来ると思います。