まとめ~ 新時代こそ、アートにイノベーションを起こそう
福田:僕がこの2、3年で感じる風は、アートにとって悪くないと思います。例えば、猪子寿之さんのチームラボですが、豊洲やお台場の展示施設は、最初の3カ月でおよそ90億円の入場料収入があったわけですね。これはディズニーランドのようなサブスクリプションモデル(入場料収入)で、入場料をとってアートを見せるという、素晴らしいイノベーションでしたね。 猪子さんの初期の頃の伊藤若冲の7つのデジタルエディション作品が一作品約400万円と聞きましたけども、七つ売れても3000万円弱。プログラマーのコストだけでこれくらいかかったそうです。「福田さん、これでは僕は全然、成り立たないと思う」と当時は嘆いていました。でもそれから彼はいろんな経験を積んで入場料収入という、ディズニーランドスタイルが自分のアートには向いているというところに到達されて、今や大成功しています。
そういうイノベーションがここ数年で起こっているので、必ずしもアートフェア東京で古い壺を買うことだけじゃなくなっていると思いますね。例えば「太陽の塔」も、本来は潰されるはずだったものが、岡本太郎さんの強烈なエネルギーによって今も生きてて、むしろ、もう潰せない。あれは企業の意図よりもアートの力が強いという、あの時代の奇跡的なエナジーで成し遂げられたんですけども、僕は今もそれができると思います。イギリスの奥にある鉄鋼の町に、「ノース・オブ・エンジェル」という巨大な太陽の塔みたいなモニュメントがありますけども、これは「鉄鋼で潰れかかった町に、巨大なアートを作るんだ」ということで生まれたんですね。でも今や、そこの観光収入がすごいことになっています。寂れかけた鉄鋼の、鉄だけで作ったエンジェルなんですよ。ですから、「アートは社会の役に立たない」なんてナンセンスな話なんですよね。
日本でいえば、水木しげるさんの故郷である島根県の境港ですね。昔はサバの水揚げが日本一でしたけど、今は水木さんの記念館の経済効果が一番になっています。だから、そういうことはやればできるんです。そのためには、企業と組む交渉力をもつマーケッターを見つけるか、村上隆さんのように自身で工房スタイルの組織を作るか。そういう事例がいっぱい出てきていますので、挑戦してみてください。
僕はものすごく楽観的にアートの分野を見ています。ですから、皆さんの中にもそういう感覚があって、もし僕がお役に立てることがあれば、いつでもご連絡をください。そんなふうに、これからの日本のアートをみんなで盛り上げていきましょう。
本日はありがとうございました。
(了)
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