環境問題とメディアは、 複雑に絡み合ってしまっている
福田:大学生をやりながら 350 で活動していたみたいだけど、両立はできた?
イアン:社会学で学んだことと、環境破壊への絶望が重なって、大学生の時に「就活は絶対しない!」って決めて、「積極的冒険心」でいろんなNPOを渡り歩いていたんですよ。いろんな人と会って話したり、いろんな活動について知識を蓄えたりしている中で、立ち上げホヤホヤの 350.org Japan に出会い、フルコミットすることにしました。結局大学は休学して、卒業までは 7年間かかりました(笑)
福田:大学は、どちらでしたっけ。そこではどんな学びがありましたか?
イアン:ICUでした。大学だけで学んだことではありませんが、人間社会は完全に自然に依存していることに気が付きました。呼吸する息から、テーブルや洋服や車を作る材料から、全てにおいて私たちは自然資源に依存しています。
例えば、建物は全てが一時期、どこかの段階では山か砂だったわけですよね。そういった形で、自然を消費して人間社会は生み出されている。にも関わらず、人間は呼吸に必要な酸素を育んでいる木を、一方的に伐採している状況がある。そしてこういった自然資源の消費は、加速している。人と自然環境の根本的な依存構造に矛盾する形で社会が形成されていることに大きな焦りを感じました。
福田:今のイアンくんの意見は、全部賛成なんですけど。僕が関わっている、西畠清順っていうプラントハンターの男は、世界中から植木を持ってきているんですね。で、彼が木を伐採するのを「けしからん!」っていう声も実際にあって。でも彼のメッセージはそうではないの。「木と人間が折りあっていくことを考える機会にしたい」って、最初から言ってたんですけど、いろんな政治的意図で歪められちゃってね。「なんだ、それを切るのか、もったいない!」みたいな。でも樹齢300年ぐらいの木って、普通に家具になっているんですよ。
トイレットペーパー含め、人間がどうしても木と関わらなきゃいけないのが、大木でいうと1人当たり7本、一生関わりますよと。じゃあ、それをどう少なくしていきましょうとか、どう合理的にしていきましょうってなった時、「どういう材質の椅子や机だったら、どう環境にいいのか」っていうことを考えていきましょうっていうセッションも設けて、実際にやっているのに、そういう活動はマスコミ的には全く無視されてしまったのね。 彼は、富山県氷見市から樹齢300年の木をイベントのために持ってきたんですけど、植林して増え過ぎちゃったから、花粉症も起きているわけ。そのことについては、もう木は増えすぎてしまったのね。世界的な視点とは別にね。で、みんな放置したままだから、そういう象徴的な木を買ってくれて、地元ではありがたいとなっていたんだけど、そういう話も黙殺されちゃって。だから需給バランスや、自然との兼ね合いをどうしていこうかっていう議論にいく前につぶされちゃったんで。イアン:物事の一側面だけしか見ていないと、本当は何が起こっているのか、どんどんわからなくなる現実もあるんですね。