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難しいから面白い「子どもに教える」ということ

「教えるセンス」を身につける Talked.jp

三谷:子ども向けの教育活動をやり始めた頃、神奈川県で小学校の民間校長をされていた方から言われました。「ボクは子ども向けに自己紹介はしません」と。それまでは、少しくらいは面白い自己紹介をしていたんですけど、それ以来割り切って最初に自己紹介はしないことにしました。小学校でも中学校でも、最初に先生たちが「こういう人が教えてくれます」って案内してくれるじゃないですか。でもそれも、「不要ですから」って。もういきなり問題から入って、それで引きつけて、最後に自分はこんなことを考えて、こんなことをやってるんだ、と伝えます。

福田:教えにやってきた知らない人に、子どもは元々関心ないですもんね。ましてや学歴や社歴なんて意味がない(笑)

三谷:そして小中学生にもいつも最後に、子育ての話をします。「どうして自分に決める力がないかというと、それは親たちが、教員たちがこういうふうにしてるからだ」と。本来は親や教員向けにする話なんですが、それを子どもにもする。「私の娘たちはおこづかいは少ないわ、自分でいろいろ調べて報告して決めなきゃいけないわ、結構ひどい目にあってきたよ」みたいな(笑) でもそんな話をしているとき、子どもたちはとても真剣に聞いてくれます。

福田:それは、身近な問題、自分ごととしてですか?

三谷:そうです。中学生くらいだと「これは親に頼ってちゃいけないな」と思う子も出てくるし、高校生だとみんな超真剣。進路も含め、もうすぐ社会に出るという感覚があるからでしょう。結局、自分が今まで決めてきたことは、実は全部親のアドバイスに従ってきただけであったとわかってしまう。「それに、今日気がつきました」と話しに来る子もいますね。

福田:その気づきだけでも大きいですね! 人生の分岐点といってもいいかもしれない。そろそろ最後の質問になりますけど。これまでの中にお答えが入っていたかもしれませんが、三谷さんが、特に子どもたちへの教育に力を入れておられる理由について教えてください。

三谷:それはやっぱり、子どものほうが変わりやすいから。経営コンサルタントだから、ずっと大人向けに仕事をやってきました。企業の経営や戦略を変えることはできるけども、さすがに人そのものはなかなか変わらない。特に役員クラスは絶対に変わらない、ですよね(笑) 私が手掛けた中で、クライアントの若手プロジェクトメンバーにとても感謝されたプロジェクトがあったんです。それは、社長が「役員たちの意識を変えたい」というもの。1兆円企業の役員たちの姿勢や考え方を合宿3回で変える、とある日上司が引き受けてきちゃいました。みんなして「そんなこと、できる訳ないでしょ!」と絶句(笑) でも仕方ないので、その会社でタブー視されているようなテーマや、役員は知ってるけど社長だけ知らないような重要案件をどんどん掘り出してきて、それを役員合宿でぶつけて徹底的に議論するみたいなことをやったんです。事業改革を通じた意識改革大作戦です。でも社長も「この前の会議で全員賛成って言っただろう!」って怒り出して、場がシーンってなって、修羅場の連続でした。もちろん予想どおり、役員の意識は変わりませんでした。やる人はやるしやらない人はやらない。でもその結果、社長がそのことに納得し、半年後役員がガサッと半分入れ替わりました。やらない人をクビにした。だからプロジェクトメンバーに感謝されたのです。

福田:そのコンサルティングをきっかけに?

三谷:もちろん、大人だって変わる気があるなら変われます。MBAに学びに来る人たちはそんな人たちです。でも、子どもたちは私の話1回で変わるかもしれない可能性を秘めています。そっちのほうが面白いなと思っていますね。面白いし、かつ、より難しいし。それに、小学生やその親向けに自信もって「こういう考え方をして、こういうふうなことを身につけていければ、将来絶対大丈夫だから」って言える人は、教育者にはいない。そういう存在として、日本の子どもたちみんなの発想力や決める力を、ちょっとだけでも上げていければいいなと思っています。

福田:なるほど。たしかにそうですよね。経営コンサルティングと、教育と。「教える」ことについての三谷さんのご経験をぜひ、今後もお聞きしたいと思います。今日はお忙しいところ、お時間いただいて本当にありがとうございました。

三谷:こちらこそ、本日はありがとうございました。

(了)

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