ユダヤ人の熱量に学ぶ
福田:そのエビ騒動って、もう1990年代に入っていました?
鬼塚:いえいえ。まだ1989年ですね。そのころちょうど、イスラエルのテレビでベルリンの壁の崩壊を見たんです。ユダヤ人にとっては大きな話題でしたけど、私にとっては目の前のエビ問題のほうが大きい。
福田:あぁ、じゃあちょうど89年ですね。
鬼塚:ですね。そして彼らは、世界にはもう共産主義がなくなったということで騒いでいました。ユダヤ人って、議論が大好きなんですよ。でよく質問されました。
福田:うん。分かります。
鬼塚:こっちは日本人だから、違う常識を持っているという前提でバンバン突っ込んできて、すごい議論をするんで疲れますよね。ひとつ返事をすると3つぐらい突っ込んでくるんですよ。なぜなぜなぜWhy? Why? Why?っ て。
福田:ものすごい分かります。僕も前職で、ユダヤ人の上司としかやりとりしなかったから。ハリウッドスタジオもそうですよ。ユダヤ人しか経営者がいないから、もう100年以上、誰も参入できない。…で、エビ養殖は結局やらなかったんですか?
鬼塚:しなかった、というかできなかった。でもエビってね、めちゃくちゃ稼げるんですよ。すぐ育つから。
福田:だから今でもエビ騒動みたいなのありますよね。
鬼塚:でも私は永住するわけじゃないし…。所詮、自分の居場所を探しに来た旅行者なので、ここからいかにして抜け出そうかを考えました。結局、そこで強引に辞めて誰にも引き継がないで帰ってきたんですけどね。でも、ボスの情熱には学ぶところが多かったですよね。ボスも私に負けじと英語のエビに関する本を読みまくって、私にエビの議論を吹っかけてくる。私と話すためにすごい勉強していたんです。いやー、すごいなって。そういう生きる力とか情熱みたいなものって、大学で学んだことよりも彼らの背中を見て学んだことの方がすごく大きかったです。
(後篇へ続く)