これからは「第三の目」が必要
福田:鬼塚さんに薦められた『ビハインド・ザ・コーヴ ~捕鯨問題の謎に迫る~』と『おクジラさま』を観たんですよ。
編集部注…『ビハインド・ザ・コーヴ ~捕鯨問題の謎に迫る~』(2015年公開 八木景子監督作品)は、反捕鯨映画『ザ・コーヴ』に真っ向から反証を挑んだ、クジラを巡る世界的な論争を描いた、日本人監督初の本格ドキュメンタリー映画。『おクジラさま~ふたつの正義の物語」(2017年公開 佐々木芽生監督作品)は、映画『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、活動家の攻撃ターゲットとなった和歌山県太地町を舞台にした長編ドキュメンタリー映画。
鬼塚:どうでしたか。
福田:面白かったです。残酷な捕鯨の様子を撮影してSNSで発信する元AP通信の人のシェパード反対派と、古式捕鯨発祥の地としての伝統を守ろうとする地元の漁業組合と、両方を客観的に観るのは第三の視座というか、「神の視座に近い」と思うんですけども。そういうことって、ネットでは絶対に与えてくれないですよね。「はい、右左どっち?」ってことしかない。だから、そういう視座をもつ友だちや知り合いがいるということは、僕はいいなって思っているんですよ。そういう人がたくさんいないと、偏った考えだけになっちゃう。今、この3つ目の視点って全然与えられないんですよね。それを与えてくれるのは映画か本だけ。ネットばっかり見ていると、非常にレベルの低い「右か左か」になってしまう。
鬼塚:本当にそうですよね。
福田:ネットだけに住んでいると、検索して、自分に心地よい情報しか見ないで済むし、それ以外の世界に触れないままいけるじゃないですか。情報も多いし。その温かい繭の中で、自分にとって辛いことはいつのまにか消えてしまう。でも実際の旅では、不測の事態って必ず起きるじゃないですか。みんな「福田さん、いつも海外に行ってて、気軽でいいですね」って言いますけどね。大変なことのほうが多いですよね。
鬼塚:間違いない(笑)。私はこういう仕事をしているので、グーグルでは人物を検索することが多いんですよ。ネット社会になってくると、人の価値ってグーグル検索に当たれば当たるほど価値があるような感じなんですね。でも本当の世界はそうではなくて…。最近でもある人物と会ったんですけど、ネット上ではまったく検索されないんですね。でもすごい人物ってやっぱりいまして、そういう人たちを今から本にしてきたいと思うんです。