VRは“体験”をパブリッシュできる初めてのメディア バーチャルリアリティー専門のアートギャラリーをオープンした実業家 福田淳に聞く

VRは“体験”をパブリッシュできる
初めてのメディア

構成: 福田千津子 撮影:越間有紀子

聞き手: 雑誌「B-maga」

日程:2016年10月

場所:VR GALLERY by Sony Digital Entertainment(東京都杉並区)

福田 淳氏

ソニー・デジタル エンタテインメント 社長
1965年生まれ。日本大学芸術学部卒。アニメ専門チャンネル「アニマックス」など多数のニューメディア立ち上げに関わる。(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント バイス・プレジデントを経て現職。

体験をそのまま再現できるVRアート

B-:さっそくですが、このギャラリーを作られた経緯からお伺いできますか。

福田:2016年はVR元年と言われ、2016年10月13日にはプレイステーションVRが出るということで、ゲーム系を中心に盛り上がっています。もちろん最初にVR体験を実現させたのは、Facebookが買収したオキュラス(VRのプラットフォーム)だと思うんですが、実はVRって、トレーニングとか、メディカルなど非ゲーム的な分野にもさまざまな可能性があるんです。今後、生活全般にVRが欠かせくなっていくと、ゲーム以外のVRについて理解してもらう必要がある。そのための一つの切り口としてVRアートという概念を考え出し、その作品をリアルなものとして紹介するためにオープンしました。

B-:アート、作品をリアルなものとして見せるのですか。

福田:もともと僕はアートが好きで、従来の平面の絵だと色彩やテイストを楽しんできました。VRの場合は立体になるので形を楽しむってことになるのですが、それは体験をパブリッシングできる初めてのメディアだってことだと思うんですよね。
単に360度映像とかそういうことだけではなく、体験をそのまま再現できるからこそアートとの親和性が高いんじゃないかと思ったんです。そこで、バーチャル上のアートをリアルのギャラリーの中に再現してみたらどうなるだろうという実験をする場所を作りました。

B-:今までもこういったバーチャルのアートっていくつかあったと思うんですが、そことの決定的な違いは何でしょう?

福田:今までこの分野はメディアアートとか、ちょっと前だとビデオアートって包括して呼ばれてきました。ナム・ジュン・パイクさん(現代アーティスト/1932-2006年)とか、代表のお一人ですよね。非常に歴史ある分野なんですけど、かつてのビデオアートは、モニターを通じた表現が中心で、それだと身体性がないんですね。プログラムしたものを表現する世界だったんです。いまは技術進化が著しいので、パソコン上のプログラムで作ったものをプロジェクションマッピングで東京駅に映したり、面白い試みがいろいろ生まれています。
このギャラリーでは、さらにその表現を進化させました。生身のアーティストが電子の絵筆で実際に描いて作ったものをヘッドセットで再現できるところが大きな特長です。人間とテクノロジーが融合してできるのが、シンギュラリティ(技術的特異点Singularity=人工知能が人間の能力を超えることで起こる出来事)の前段階として非常に面白いかなと思ったんです。

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