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VRは“体験”をパブリッシュできる初めてのメディア バーチャルリアリティー専門のアートギャラリーをオープンした実業家 福田淳に聞く Talked.jp by Sony Digital Entertainment

CGよりも精度が高い人間が手描きしたVR作品を作る

B-:より人間の有機的な感覚に沿った形でアーティスト表現ができるようなメディアであるということなんでしょうか。

福田:そうなんですよ。ちょっとメッセージ的なことになるんですけども、シンギュラリティ (機械やAIが人の能力を超える日)になったらどうなるのか考えてみました。実はすでに過去の産業革命で同じようなことが起きているんです。
19世紀初頭(1900年)にアメリカの農業従事者は、人口の80パーセントを占めていた。100年後の21世紀(2000年)には、たった0.2パーセントしかいなくなっていました。作られる穀物の数は当時の何百倍も増えているんですよ。だからって、農業従事者たちが みんなクビになっちゃったのかっていうと、そんなことはない。なだらかな時間の流れの中で別の仕事にシフトしていった。
同じことが今、ICT(情報通信技術)の発達によって急激に起きている。UberとかAirbnbだとか、いろんな中抜きサービス(移動は無くならないけどタクシー会社はいらない、宿泊は必要だけどホテルはいらない等)が生まれた結果、間接的な存在は全部いらなくなって、直接的なマーケットがスマホを通じて現れたと思うんです。
一つ、面白い事例がありまして、あるシステムエンジニアの方(ドレミング株式会社:Doreming Co.,Ltd.創業者の高崎義一氏)が銀行口座を持ってる人がどれくらいいるか世界中を調べたところ、たった30パーセントしかいなかったそうんです。もちろんアフリカの人の多くが銀行口座持ってないというのは想像つくことなんですけど、例えばロンドンなんかでも銀行口座持ってない人が多かったんですね。シティと言われて金融の中心なのに……。なぜかと言うと、難民がいっぱい来て、それがEUから離れるきっかけにもなっているわけなんですけど、あまりにもたくさん来ちゃって、当然みんな銀行口座持っていないわけです。で、そのシステムエンジニアの方はどうしたかっていうと、デビッドカードさえ作れば銀行口座がなくても、自分の職場のアカウントから直接払えるって仕組みを作ったんですね。そうすると「銀行いらない」ってことになる。それに目をつけたイギリスの投資家たちが野崎さんの会社をロンドンのシティで作ってくれって依頼してきたっていうんです。すごい話しですよね。
日本ってファックスがまだ残ってて、銀行にも昼間行きますよね。店内には結構なスタッフがいて、案内だけする人とか「ここに記入するんですよ」と説明する人とか、人件費も多く使っている。でも今はスマホでお金もトランスファーできるんで、このようなサービスは申し訳ないですが、無くなってもいいんですよね。
本論に戻しますと、シンギュラリティの後に人間がやることって、つまり、人間しかできないことなんですよね。だからどんなテクノロジーが発達しても、その後にライフスタイルだとか、僕の専門分野でいうとエンターテインメントコンテンツなどが必要になると思ったんです。で、自分らしいVRの活用方法がないかっていうときに、人間が手描きしたものをコンピューターグラフィックスよりも精度が高い作品として残せないかってアイディアが浮かび、VRアートしかないだろうということで今回始めてみました。
プレステVRのゲームから入るのが一般的なような気はするんですけど、大人でゲームに関心がないと、アートからならわかりやすいと考えました。VRは難しい外科手術にも応用されていますし、不動産屋さんが内覧会などで前のお客さんがいて次の人が内覧できない場合に利用したりするケースも増えてます。あとウエディング産業なんかは、写真やビデオを残すサービスがありますが、VRで残しておけば子どもたちにパパとママの結婚式が体験できるよということで、やっぱり初めて体験をパブリッシュできるのがVRの大きな特長だと思います。

VRは体験そのものを拡張できる

B-:VRでの体験を保存して将来に残しておくようなことができると。

福田:そうなんですよ、もっと進めば、やがて他人の人生を経験できるところまでいくんですね。例えば、下町のマエストロの技をVRに残しておいて後世に継ぐとか、人間国宝みたいな人の人生をそのまま残すこともVRだったら可能だと思うんですよ。
ヘッドセットがコードレスになったり、軽くなったりしたら、東京オリンピックに向けて、競合の一流アスリートの身体の動きを体験してもらって、スキルを上げるだとか、あとはマインドを安定させるために先生にプログラムを組んでもらうとか、そういうメディテーションの部分でもVRっては活用できるんじゃないかと思います。VRには「没入感」があるんで、いろんな可能性が考えられるわけですね。ハワイウエディングをしたいカップルもわざわざ下見でハワイにまで行けませんが、それをVRで体感できるようになれば用途は無限にあるかなぁと思います。

B-:これまではスポーツのスキルを獲得してから自分がその体験をするっていうような流れでしたけど、もしかしたら今後は体験からスキルを自らが獲得するようなことができるかもしれないですね。

福田:そういうことができるのが「拡張機能」なんです。歴史をひもとくと、電話ができたときってすごいイノベーションがあったと思うんですよね。それによって耳と口を拡張できた。で、テレビっていうのはさらにそれに加えて目の機能も拡張できたと。そして、VRは体験そのものを拡張できる。つまり自分が体験していないことを体験できると。いうことでいうと、かつてないメディア革命がVRで起きると僕は予想しています。
ポケモンGOでARが話題になったんですけど、ARっていうのはあくまでスマホがあって現実を見る眼鏡の一つのフィルターっていいますか、アプリケーションなんですけど、VRは全然違ってテレビモニターもなくなりますし、体験そのものっていうことでいうと、これは全く新しいニューメディアなんですね。

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