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Netflixがミレニアル世代に刺さる理由

ソーシャルメディア時代だからこそ、「極め人」より「フラクタル」Talked.jp

草野:Netflixの話をしていいですか。

福田:もちろん。

草野:私、Netflix大好き人間なんですよ。今、「社会現象を起こすような大ヒットのコンテンツを生むにはどうしたらいいのか」というヒントが、Netflixにはあると思っていて。もしマスカルチャーみたなものがなくなった時、どういうコンテンツが流行るかなと、Netflixの作品からその共通項を導き出してみたんです。

福田:面白いね。その分析結果をぜひ知りたい。

草野:ディグり(*2)甲斐のある作品は人気があります。そのためには、複数の人を複数の角度で魅了しなければならなくて、コンテンツがとても多面的になっているなっていうのを感じています。私がNetflixを好きな理由は、設定がニッチで、エッジーなものが多いところ。新しい世界を見せてくれるし、よく取材、リサーチして作られているんですよね。というのは、今って作り話だとすぐにバレて、「事実と違うだろう」とか、「原作の再現度が低い」とか、あれこれ叩かれちゃうから。それだけに、他のマス向けに作っているものよりも面白いと思って。

福田:反ディズニーだよね、考え方としてね。たしか前に聞いたけど、いじめっ子が白人じゃない設定っていうドラマの話が印象的だった。

草野:『グッド・プレイス』(*3)1ですね。でも、その他の作品でも、これまでとは違う人種設定のもが多いんですよ。アメリカのティーンの間で大流行した『リバーデイル』(*4)1もそうでした。 つまりハリウッドが、長年ステレオタイプを続けすぎたんですよね。これまではアジア人の役といったら、すごい片言の留学生とか、オタクで数学が得意なナード(*5)とか。でも『グッド・プレイス』を見た時、主役は白人のクリステン・ベルなんだけど、美人でスノッビーな、富裕層の役はイスラム系の女優が演じていて。おばかでスポーツ大好きなイケメンのマッチョはアジア人の男優で。

福田:面白いね!

草野:あと、哲学が得意っていう登場人物を、アフリカ系黒人の俳優が演じていたんですよ。そういうキャスティングは、役者の人にとっては大きなチャンスですよね。だって普通に生活していたら、アジア人だってナードなタイプばかりじゃないし、マッチョでイケてるヤツもいるし、黒人にだってオタクの人はいるわけじゃないですか。なのにハリウッドの世界では、そういうステレオタイプな設定がずっと続いてきた。でもNetflixの作品では、白人以外のアジア人女優にもいろいろな役の幅やチャンスを与えているし、いろんなバイアスから解放されてきているなぁ!と思って。

(*2)音楽用語で「ディグる」dig(=掘る)る。「(音楽を)探す」という意味

(*3)アメリカ合衆国のファンタジーコメディテレビドラマシリーズ。制作はマイケル・シュア。NBCで2016年9月19日に初公開された。

(*4)累計20億部を売り上げている人気長寿コミック「アーチー・コミックス」が原作の青春ミステリー。製作総指揮はグレッグ・バーランティ。2017年の「ティーン・チョイス・アワード」で7部門受賞。

(*5)スポーツが苦手で社交性にかけるタイプの人を幅広く指す英語圏のスラング。特に数学やコンピュータなどの分野における知的能力は高いという特徴を持つ。

(後篇へ続く)

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