「テクノロジー」と「一般企業」の橋渡し役が求められている
國本:福田さんは、いろいろスタートアップに投資をされておられますよね。SOUNDRAW(誰でも楽曲を作ることができる動画クリエイター向けのAI作曲クラウドサービス)とか。私も使いましたけど、あれ素晴らしいですね。
福田:はい。絶対にナンバーワンになる可能性があると思います。僕の投資の基準は成長性あるとかないとかだけではないんです。そして、そんなことわからないですからね。じゃあ何かというと「自分の人脈が役立てられるか」ということだけなんです。
自分がまったく貢献できないような分野のことは、いくらみんなが成功するよって聞いていても投資しないです。
先程のSOUNDRAWの代表・楠 太吾さんは関西の人なんですけどね。ご自身がミュージシャンなんですよ。これがまず大きくて、自分がドラマの曲を作っている時、必要な歌がないし、著作権処理が面倒くさいな、と。2020年10月の本格ローンチで、15億の組み合わせまでサウンドが作れる状態になっています。画面を見た時、そのムードから音楽を作るところまで行けるんですよ。
國本:はい。まさにあれは革命的だと思います。
福田:アメリカにも似たようなサービスあるんですけど、音楽中心なんですよね。で、こちらはサブスクモデルで、YouTuberとドラマに対して楽曲を提供するということなので、伸びしろがあるなと思います。
國本:音楽とネット、デジタルの関係性もマッチしていますよね。
福田:はい。そして、プレゼンの時のコンペティターに対する分析も鋭かったんですよ。僕は、孫正義さんじゃないですけども、プレゼンの中身を見ずに、その人自身を見て投資することが多いので。具体的な社名はちょっと出せないのですけど、以前、「よく分からないキーワードが97%」という感じで、あまりにプレゼンが専門的すぎる企業があったんです。テクノロジーの技術的な話ばかりばんばん来るから、みんなついていけないんですね。でも、何かできることありそうだ、となったらそういう尖った企業と老獪なレガシーの大企業を結びつけて、なんとかならないかと考えてしまいました。
僕の役割は、ベンチャー企業と、大企業をマッチングさせること。それができそうならエンジェル投資する意味があると思います。
國本:その役割は、とても大事だなと私も思っています。今、日本はそれこそ東大発ベンチャーとか、AI企業がたくさんできているんですけど、エンジニアの人中心の会社が多いので、「技術ファースト」で話してしまうんですね。でもお客さんとしては、技術よりも「何が解決されるのか」を知りたいことが多い。まさに、そこの翻訳機能というところがないと、たとえ素晴らしい技術を日本は持っていたとしても、導入されないということがあります。
福田:解決には、仮説立案能力が本当に大事です。2年くらい前、大企業のコンサル料よりも安い設定のコンサルコースを5社の限定でつくりました。そしたら、若い経営者にものすごく頼られて、いや頼られすぎて、本来社長が判断すべき案件の相談が増えてやめました。
コンサルとか、経営者の悩みを解決するのが仕事ではなくて、失敗の経験も共有できるようなパートナーシップなんですよね。「これを解決できないんですか」とか、さすがに、それはあなたが社長なのだから、解決するのはあなたの役目でしょう、と。わたしが解決しちゃったら、僕が社長になりますよ、と(笑)。
つまり、提案はするけど、決めるのは社長です、というところをご理解いただかないと難しいですね。
國本:これからの経営者には理系出身がもっと出てこないと、そこの部分の橋渡しがなかなかできないですよね。
福田:データドリヴンですよね。以前、P&Gのマーケティングに関わったことがあるのですが、シャンプーとか石鹸とか、非常にコモディティ化されたものを売っているので、「理屈がないと売れない」というところが僕は好きでした。「今度はちみつ成分を入れました」「コスト上がりました」「何部売れました」と、すべてロジカルに取り組んだ時に初めて、その新製品が売れるわけですよ。「なんとなく売れた」とか、売れた理由がよくわからない経営者は、コロナ禍以降は厳しいと思います。