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「耳」は置き去りにされていた

“観る”から“聴く”へ Voicyが変える、音声メディアの未来   Talked.jp

福田:そして、ご著書の『ボイステック革命』(日本経済新聞出版)の出版もおめでとうございます。

緒方:ありがとうございます。

福田:装丁のデザインも本文デザインも、伝わりやすいですね。すごく「緒方さんっぽいなぁ」と思いました。

緒方:できるだけインパクトが出るよう、出版社の方も作ってくださって。サイズもちょっとだけ縦長なんです。

福田:いいですよね! 遊び心もあって。

緒方:『ボイステック革命』というタイトルですが、どちらかというと内容は「未来のライフスタイルの変化」という感じです。「ライフチェンジ」がテーマなので、これからの未来がどうなるのか、知りたい人に向けてなのですけど。ボイステックだけにしてしまうと、「うちは音声、関係ないし」と思われたら嫌だな、というのもありました。たとえば「スマホ革命」という本があったとして、「うちはスマホが主軸じゃないし」といっても、現実はそうではないですよね。実際、スマホでライフスタイルが180度変わりましたから。何か、そういうものに近いイメージで、次世代の話をしようと思って書きました。

福田:読者は「何だろう? なに、なに?」という感じで本を取ると思いますよ。これはインパクトあると思います。僕は20世紀のバブル世代で、マスメディアにずっと関わってきました。コマーシャルフィルムのプロダクションマネージャーを経て、ハリウッドの映画会社の仕事をして、その後、有料多チャンネル放送の「スカパー!」のテレビ立ち上げに関わりました。なので僕は緒方さんとは逆で、「聴く」ではなく「観る」を推進してきたんです。

緒方:なるほど。たしかに。

福田:20世紀って大概そうですよね。「“観る”を開発しよう」という世紀だったけれど、21世紀からは違う、ということですよね。

緒方:面白いですね。「“観る”を開発」し続けておられた。

福田:ずっと、そうしていました。もっと「観ろ」と。「400チャンネルあるぞ!」とか言って(笑)やっていたのですけど。でも今メディアは「“ながらで”できる」ということでしょう?

緒方:はい。人の生活が拡張される時代が、また少し、進化してきたのかなと思います。人が感動したり、未だに覚えていたりするものというのは、耳から入ってきているものが多い中で、これまで耳は置き去りにされてきたなという部分は大きいと思います。

福田:おそらく20世紀の間で、かなり衰えたのでは?

緒方:そう思います。とくに日本語は、パッと見た時にめちゃめちゃ文字が分かりやすいですよね。しかも英語と違って、センテンスの冒頭に“not”がこないので、「○○○○ではない」みたいな表現になるから、話し言葉の最後でひっくり返されたりするんですよね。だから今までは、パッと見て、パッと分かりやすく、パッとコンバージョンするとか、華やかで刺激があるものとか、そういうコンテンツの全盛期の時代だったと思います。特に性などにも開放的な時代になってきて、見ただけでパンチ力のあるものが中心になってきた。でも世の中、次第にアテンションだけでは伝わらなくなってきて、訴求力だけよりも、「より心に刺さるもの」がどんどん求められるようになってきた。人間味とか本人性とかですね。「心に刺さるものが、本当は大事なのでは?」というふうになってきたのが、今の世の中なのかなと思っています。 それはきっと、情報が溢れすぎたのかなとも思っていて。ファストファッションではないですけれど、どこでも無料で情報が手に入るようになると、「どうせ手に入らないのなら、自分が好きな人から得た情報で十分なのでは?」というところにもなってきた。好きだったり、共感、好感が得られるものだったり、というのがかなり中心になってきていると。

福田:よくわかります。

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