進化を阻む「引き継ぎ文化」
福田:そのことについて、マーケッターは気づいているのでしょうか?
緒方:世の中のマーケッターという人たちは、20世紀ビジネスのままの人が多いように思います。最後にお金が稼げるかどうかだけを見ている部分もあるので……。
福田:マスメディアの効果測定に慣れると、かえってマーケット心理から遠ざかってしまう、みたいなことが現在では起きてますよね。広告を多様性とか動的で立体的なものとして捉える能力が求められていると思います。
緒方:マーケッターというのは、CPA(*2)と結果で勝負している人たちなので。新しいものを成果があるかどうかで捉えているのは、今はマーケッターというより、デザイナーだったり新規起業家だったり、そういう人が扱うようになっていますね。なので、アメリカはそういう動きがすごく早いです。でも日本は、「どこかの会社が成果を生めば使おう」となるので、どうしても動きが遅くなる。
福田:なぜなのでしょう? なぜだと思います? 僕も、長年そういう感じがしていました。だから、Amazonのような破壊的なビジネスモデルのイノベーターが突如現れ、成功してしまうのではないでしょうか。
緒方:そうですね。海外の場合、人事変更があって部長が替わった時、今までやっていた人たちのやりかたを全部否定して、新しいことをしなければいけないと考えます。そうでなければ、自分の存在価値がないからです。なので、できるだけ今まで使っていないような、新しい素材を探し始めるのです。結構、新規のトライが多いですよね。でも日本は、できるだけ前任者がやったことをやろうとしている。
福田:引き継ぎ文化ですしね。
緒方:はい。前任者がやっていることを引き継ぎつつ、そのあと、どこかがうまいことやったらそれを輸入するかどうか、他社事例があるかどうかの稟議を交わしてからやりますよね。そうするとどうしても、もう2世代、3世代遅くなりますよね。
*2…Cost Per Acquisitionの略で、デジタル広告における顧客獲得単価のこと。
(後編へ)