肩書きは「サラリーマン」
福田:鷹鳥屋さんのユニークさって、今回ここだけでは語り尽くせないですけれど、「サラリーマンです」と、言い張っておられるわけですよね。
鷹鳥屋:はい。サラリーマンって、言い張っています。
福田:そこに何かこだわりがあるんですか?
鷹鳥屋:こだわりというか、一介のサラリーマンであっても、何かを突き詰めればここまで行くことはできるんだよっていう、ひとつのケースを表したいというのがまずひとつですね。あとはこの本の版元・星海社の方たちに、「日本人にもっと大きな世界、大きなものを見てほしいという気持ちを込めて書いてください」と言われたので。ふつうのサラリーマンでも、こんなふうに働いていたら、こんな面白いことも起こるんだよというケースを、たくさん見せてあげようと考えたんですよね。なるべくマイルドな、ときには面白いものを寄せ集めて。じつは、もっと激しい経験もありますよ。催涙ガスや鎮圧弾飛び交う中にいたとか。
福田:え! どこで?
鷹鳥屋:パレスチナ、イスラエルの国境とかですね。あとガザ地区近くですね。わたしがいたときは、まだ単発のミサイルだったのですが、最近は映像を見るとミサイルが連発になって激しくなっているなぁ、と感じました。私が行ったのは2014年のガザ侵攻後、第3次インティファーダが起こるか、という少し緊張状態の強いタイミングでした。
福田:日本人からすると、政治状況はどのように映るんですか?
鷹鳥屋:そうですね。正直遠い国の出来事で、そもそもなんで争っているのかが分からない。テレビ番組では、毎回パレスチナ問題の解説からしなくちゃいけないという。それだけ認知度が低いわけで。だって、7,000とか8,000キロ離れたところで起きている、東京都よりも狭いところの取り合いがガザ戦争みたいなものですから。そこまで興味を持つ日本人は正直少ないところがあります。ただ、義憤に駆られて何かの関係で知ってしまった日本人がラディカルに反応するケースもあれば、イスラエル側の仲のいい日本人がそれを養護するなど、そういう応酬はまさにリアルでも、SNS上では盛んでもありますが、私は、基本的には距離を空けています。歴史学専攻の人間からすると、国が滅びるなんて当たり前のこととして、ですね。その国を維持できなかったところを俯瞰して見ています。「イスラエル、もといユダヤ人の国は、かつて紀元前の時代に生まれたのが興隆を経て滅びた。滅びてアシュケナージ(*2)となって、何百、何千年もかけて取り返したのだから、パレスチナ人も、長い時間をかけて頑張って取り返せばいいのでは」と言ったら、パレスチナの方にすごい嫌な顔をされましたね。
福田:僕も中国でビジネスをやっていることもあって、台湾と香港についてはあまり語らないようにしています。でも香港の歴史を分かっている中国人と話すと、いろんな自由はないのかもしれないけれど、「香港はいかにイギリスから中国に返還されたのか」という歴史を思い返すに、歴史は繰り返す、じゃないですけれど、今度は奪い返したという話なんですよね。
(*2)…東欧国を祖先にもつ東欧系ユダヤ人