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ヒエラルキーと三島由紀夫

日本人サラリーマンがアラブの王様と付き合う交渉術  Talked.jp

福田:ご自身で起業しよう、と思われますか? これ、よく聞かれるのではと思うんですけど。

鷹鳥屋:聞かれますね。ただ本にも書いたのですけれど、中東って、まず「絶対できる」「余裕さ、任せろ」と言った後に実際動いたら…納期守れない。約束守れない。支払い守れない(笑) そんなの個人でやったら会社、簡単にキャッシュフローが崩壊して吹っ飛びますね(笑)

福田:じゃあ、ある意味中国と一緒ですね。ぼくもドバイで仕事していたときは、半分前金で原価が大体半分だから、プラマイゼロでいつもやっていました。「入金がないならやらない」ってしつこく。

鷹鳥屋:素晴らしいです。そのやり方で正しいです。どっちかっていうともう7:3ぐらいにしといて、残り3は支払われない前提で動く、みたいな感覚でも間違えないと思います。私は企業か、政府マターの仕事じゃない限りは受けないことにしています。今も日本の商社と組んでやる案件であれば動きますけれど、そうじゃなかったらなかなかやらないですね。個人の財閥とかでも。トラブルが起きて現地で訴えても勝てないですから。

福田:昔の中国と一緒ですね。

鷹鳥屋:もちろん国や個人にもよりますけどね。

福田:僕は今、ロサンゼルスサンタモニカでアートギャラリーをやっているんですけれど、ドバイの現代アート市場のあの活性化を考えると、もしそういうアートフェアがあるなら、持って行ってみたいです。

鷹鳥屋:でしたら日本から直接行くルートよりも、アメリカやイギリスでの流行を好むと思うので、入り口はアメリカ側からがいいと思います。著書にも、ヒエラルキーについて書いています。王族とか豪族の存在がトップがあって、間に白人が入ります。白人と現地人みたいなのが入って、その下にアジア系労働者。これがある種のヒエラルキーです。人種差別、アジア人差別とはっきり書いていますけど、基本的に下に見ています。ただ、日本人は名誉白人みたいなゾーンにいるので、アジア労働者と白人労働者の間のゾーン。そういう立ち位置です。それは先人の方々の苦労のおかげで。

福田:でもなんでしょう。人種差別といっても、どこか明るい、カラッとしたところがあるように思いますね。話せば少しは分かるだろうっていう感じは持ちましたけどね。ぼくの少ない体験の中では。

鷹鳥屋:もちろん。誤解を恐れずにいえば、馬鹿にしてきた人は、基本的にはあまり教養のない人が多いですね。

福田:それはじゃあ、世界中一緒ってことですね。

鷹鳥屋:そうです。だから教養の高い人だと、突然「おれ、MISHIMA読んでるよ」と「三島由紀夫を読んでるの!? すごいな」となったことがあります。この前も芥川龍之介のアラビア語翻訳された本が出たって聞いて「マジか! 読む人がいるのか!」と驚きました。

福田:何で読んでいるんですか? キンドル?

鷹鳥屋:電子書籍もありますが実本ですね。ちなみに現地では紀伊國屋書店がドバイとアブダビにあります。ありがたいことに、私の本も30冊ドバイ店に収められていて。誰か読んでくれるのかなぁ(笑)

福田:すごい! 三島でも芥川でもアラビア語版で出ているって、誰がそれを翻訳しているのだろう。

鷹鳥屋:英語から翻訳するケースもあれば、日本に留学された学者の方とか、やはり少数でもいらっしゃいますね。

福田:では、リアルに売れている作品というのは?

鷹鳥屋:アートの時にも言ったように「世界的に有名だから有名」という流れがあるので、結局『ノルウェーの森』とか、世界で有名な作品ですね。

福田:そうしたら僕は、素晴らしい日本のSFを推したいなぁ。

鷹鳥屋:なるほど。私なら星新一さんのあのショートショートのなんとも言えない不条理な内容を、アラビア語でどう表現するか、興味がありますね。そこは翻訳者の腕のレベルが試されますが、出て欲しいですね。

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