王様と難民とテロリスト以外の中東を
福田:鷹鳥屋ご自身の夢ってありますか? たとえ現実的じゃなくても。
鷹鳥屋:そうですね。かつて埋もれて、死蔵していた日本のコンテンツって、結構現地で人気だったりします。例えば、タツノコプロの『みなしごハッチ』というアニメ作品。あれ実は、中東で、特にクウェートで人気だったりします。あとは『アストロガンガー』。日本ではあまり人気がないですけど、現地では王子も1曲歌えるぐらい人気。向こうでは『ジョンガル』っていうアラビア語になっちゃうんですけど、「ジョンガル!ジョンガル!アドフジャホンジャッパー!」って、誰もが歌えるぐらい、耳に残るほど幼少期に見ていたり。そういうコンテンツをもう1回プロダクト化して、日本のコンテンツ展というかたちで、アラブに刺さるようなデザイン、リデザインしたものを全部並べるというイベントをやってみたいなと思いますね。
福田:すぐできるんじゃないですか? それ、夢じゃなくて一瞬でできますよ。
鷹鳥屋:いや、ゆっくりゆっくり。だってさっきお話した『グレンダイザー』のフィギュア制作とかも全部じつは手弁当で、サラリーマンで稼いだお金を全部そこにつぎ込んでやっているので(笑)
福田:なるほど。ではクラウドファンディングとかは?
鷹鳥屋:日本でクラウドファンディングをやってもアラブっていうところがピンと来ますか? アドバイスありがとうございます、手法を色々考えていきます。日本でニュースになるのって結局、王様がすごいっていう話か、難民がかわいそうって話か、テロリストの話しか出てこないんです。だからそれ以外の裾野を、もっと広げていきたいですよね。それにリベラルアーツ的な部分の中東って、空白地帯です。 それにもし仮に今後日本人がどこかでアラブ人に会ったときに「あ、石油王?」とか、心の中で「あ、テロリストみたいな風貌してる」とか、そんなことではなくて、「おまえの国では〇〇のアニメ人気なんだな」とか、「おれは貴国の歴史を知ってるぞ」みたいな会話の潤滑油になれるような活動をしていきたいと思っています。ただ、「アラブは好きですか?」と聞かれても即答はできないです。本当複雑で。アラブのいいところと悪いところ、両方知っているので。
福田:多様性ですよね。違いを知る。ぼくもアメリカ好きか嫌いかって言われたら、ほんと複雑です。日本好きか嫌いかっていうのも複雑かもしれない。人によるんですよね。今、世の中の見方というか、そうやってまるっとした見方をフレームとして与えられちゃっているんですよ。本当はもっと、個々に違うはずなんですよね。個々の違いを理解できる力が弱い。だからそこを鷹鳥屋さんは……。
鷹鳥屋:底上げ、深耕したい。ですね。