エンタメ系が最後の砦
福田:アラブで日本人は、どんなビジネスに機会があるのでしょうか?
鷹鳥屋:チャンスは、エンタメしかもうないです。先程「白物家電はダメで、車が残っている」と言いましたが、日本は韓国社、中国社の攻勢を受けてきて……。今可能性が残っているのはエンタメ系ですね。ただエンタメ系も、中国や韓国に追い上げを食らっているのはちょっと感じるところです。「エンタメ+何か」がないと、おそらく生き残れないだろうな……というのは、すごい肌感覚で感じます。プロダクトなのかサービスなのか。そこの部分で、何かの技術と組み合わせないと、おそらく日本のエンタメ優性は完全に崩れる。韓国漫画、中国漫画の力が今どんどん伸びてきているので、そこでも凌駕されていくのを自動車産業と同じように感じています。アメコミも今流行っていますし。
福田:ついにアメリカが入ってきちゃった。それはやばい。
鷹鳥屋:ここ最近どんどん作られたマーベル作品の映画の影響です。現地のイベントでも映画の封切りのタイミングにもよりますが、日本のコンテンツが4割、アメリカ系のコンテンツが6割強ぐらい、みたいな構成ですね。中国、韓国だけでなく、アメリカも飛び越えてきたっていうところも……まぁ元々素地として強かったのはあるんですけど。
福田:求めているストーリーが……
鷹鳥屋:分かりやすい! そう、そこなんですよ。
福田:敵をやっつける。勧善懲悪ですね。
鷹鳥屋:現地の人でアメリカ嫌いなのに、キャプテンアメリカのコスプレをしているとか、笑ってしまう一貫性のなさが面白かったりします。
福田:でも総合的には「アメリカ嫌い」とか言ってるんですよね? でもそれって結構どの国でもあるかもしれませんね。
鷹鳥屋:みんな嫌いというわけではなくですけど、報道とか情勢でネガティブな印象はあるでしょうね。アメリカは嫌いだけど、そこから派生したハリウッドエンタメは好きっていうのは結構いたりするので。
福田:そうすると、Netflixみたいなメロウなものは、あまり流行らないかも知れませんね。
鷹鳥屋:ところが。まさにその話を振られるを待っていました(笑) 日本のアニメって、いっぱいあるじゃないですか。ストックされて溜まっていた作品が世に出る蛇口とも言えるのがNetflixなんですよ。Netflixが配信したものは、現地で流行るんです。だから配信されなかったものは日本国内か、もしくは配信された地域でしか流行らないという蛇口を、今アメリカに握られている。だからソニーがクランチロール(*7)を買収したのは自分たちの作品を世界に出すプラットフォームを確保するためです。自分たちの資本の入ったアニメ作品を流すことによって、現地でも人気が出て様々な需要を生むので。プラットフォームを買収したソニーの手法は間違いなく正しいと思います。あれは素晴らしいと思いました。
(*7)…アニメ、マンガ、ドラマのストリーミング配信に特化した、アメリカ合衆国の配信会社