完全暗号貨幣の描く世界②
中村:先ほどの話に戻りますと、デジタルの貨幣が作れるようになると、今までのように銀行を使って配るとか、流通させる必要がなくなります。インターネット上で流通ができるのであれば、誰でも、あるいは小さな団体でも発行できる、ということになりますよね。
福田:空手の国際組織が、独自の暗号資産を「クリプトキャッシュ」を利用して発行する予定、ということも読んで驚きました。もう実際に運用が始まっているのでしょうか?
中村:まだです。空手のある宗派の管長さんとお話しをしているのですが、例えばアフリカを例にとってみると、国によってはお弟子さんはたくさんいらっしゃるけど、その国の通貨自体が安定していない。そうすると、ドルとかユーロとか、そちらの通貨を使いたいと思われてしまう。でも当然ながらそこら辺に出回っているわけではないですから、やっぱり自国の通貨を持っている。持っているけど異様なインフレで、全く使いものにならなくなってしまう……ということがあるんですね。そのときにもし「空手キャッシュ」という完全暗号貨幣が、空手の管長さんを中心に、そのコミュニティで発行して流通していれば、もしかしたらそちらを使うかもしれませんね。
福田:信用力の高い集団が、ある流通性と需要を持ってして運用すれば、それはあるかもしれないですね。
中村:どうやら、そういう道場にいらっしゃるお弟子さんは、自国の大統領よりも道場主、先生のほうをリスペクトしているらしいんです。
福田:へぇ?!
中村:そうすると、デジタル空手キャッシュみたいなものがあったとしたら、道場で先生から渡されて、「君は信用力があるから100ドル分を貸してあげよう」みたいな話になってくる。すると銀行じゃない所から流通することが実際にできるわけですね。 これまで、紙を印刷する技術はとても大変でした。多くの国が、日本やイギリス等、印刷技術の高い所に頼んでいましたよね。でもデジタル貨幣が一般的になれば、そういうこともしなくてよくなる。紙の場合、お金を払って印刷してもらって運んで来なければいけないし、古くなったら新しいお札に変えてまた戻さなければいけないし……と、ものすごいコストがかかっていたのですが、それがいらなくなりますね。自国で発行して、自由に量も調整できるということになる。それがもし駄目だった場合、コミュニティが発行する貨幣が代替するということですね。
福田:「信用性が低い国家がクリプトキャッシュを使いますよ」といったときに、画期的な経済運営が可能になっていく可能性がありますよね。
中村:特に税制面がそうですね。今、発展途上国は徴税がほとんどできていないらしいんですよ。ほとんどの人が払ってないというか、徴税制度そのものがちゃんとしていないということなんでしょうね。税金が入ってこないから、外国からの支援金などを使うしかない、という話になってしまっているらしいです。