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グローバル経済の行く末は

暗号貨幣から「経済の多層化」社会へ(後編)  Talked.jp

福田:社会って、別にお金があってもなくても豊かであるべきだと僕は思うのですけど、残念ながら経済格差がどんどん広がっていって、一部の人たちだけが富を独占しているような状況です。安全な流通性を確保することによって経済が標準化する部分もあると思うのですけど、このクリプトキャッシュが今後の社会に与えるインパクトで言うと、「持たざる者へのプラスの要素」というのはどういうことが考えられるのでしょうか。

中村:私は経済学者ではないので間違っているかもしれません。しかし、自分の中で考えている夢のような話として申し上げると、自分が生きていかなければならないコミュニティが1つとは限らない世界があるとします。たくさんあるコミュニティの中で自分で選択できるような状況になっていれば、どこかが最適で、どこかに受け入れてもらえるかもしれませんよね。コミュニティを運営している、その元になっている経済が日本円だけではなくて、それぞれが発行している貨幣であるとするならば、独立した貨幣経済が回っているはずです。そうすると、日本円の中では生きるのが難しかった人、生きにくかった人たちも、もしかすると別のコミュニティなら生きていけるかもしれませんよね。そうすると、このクリプトキャッシュを使えば、たくさんのコミュニティ経済が存在する状態を作れる可能性がある。例えば、さっき空手の話が出ました。空手が価値のすべての人たちがいる。空手コミュニティの人たちは、空手キャッシュのみを使う。絶対にテコンドーキャッシュは使わないでしょうね。

福田:そうですね。派閥が違います。

中村:ええ。それで分かると思うんですけど、それぞれの経済が独立してあるわけですよ。で、テコンドーからはじき出された人も空手のほうに入って、空手のコミュニティの一員にさえなれば、この人はここで生きていけるかもしれませんよね。つまり私は、「経済が多層化する」と思っているんです。

福田:なるほど。素晴らしいですね。

中村:多層化したときに、空手の経済とテコンドーの経済は、全部の経済でトータルどれくらいになるのかというときは、足し算できるでしょう。というのは、交わらないから。もう1つ仮説として、グローバル経済は完全に破たんしたと思っています。例えばアップルのスマホにiPhone15が出ました、といったとき、マーケティングの結果、日本では2000ドルで1000万台売れることが分かった。しかしアメリカでは、5000万台売れるんだけど1台100ドルになっちゃった……となったとき、アップルコンピュータ社としてまともな判断力があれば、日本だけで売ったほうが得ですよね。利幅も大きいし。……そうなんですけども、今は両方の市場を取りたいので、アメリカでも売る、日本でも売る。でも、日本人だけが2000ドルで買わされているのは嫌じゃないですか。となると、アマゾンで買いますよね。そうするとインターネットのグローバル化のせいで、価格がぺっちゃんこになっちゃうんですよ。100ドルになっちゃう。一方で100ドルで売らなくてはいけなくなったアップルコンピュータは、アメリカで作るのは高いから、安い所で作るわけですね。安く作れる国はあるわけですけど、そこはアメリカ人より給料が安かったり、原材料が安かったりする。ということは、アメリカ人ほどの給料がもらえないということですから、相対的に貧しくなるわけですね。
結局、プライスもコストも両方ぺっちゃんこになってしまうから利幅も小さい。小さい利幅を、全世界で全部集めてきたところでたいしたことはないから、タックス・ヘイブンに持って行って税金を払わないわけでしょう。そうなると「一体、誰が得をしているんですか?」という話になる。つまりグローバル経済はものすごくいいように見えて、実は経済をぺちゃんこにする。そういうベクトルがあるのではないかと思うんですね。

福田:だから地域差を越えて、デフレ圧力が強くなってしまう仕組みのレバレッジになる、ということでしょうか。

中村:そうです。単にお金を流通させるために、お金をたくさん刷ってインフレにしようという動きがあったとしても、もともとの経済の方向性が「ぺちゃんこ」方向です。その富を全部集めたところで「世界70億人が食べられますか?」という話です。そうではなくて、それぞれ違うコミュニティが違う経済を形成していれば、それはおそらく多層化します。しかも選択肢が増えるので、「こっちのコミュニティからあぶれた人は、あっちにもこっちにも」行くことができる。あるいは、「私は空手もやるけど仏教もやる」でもいいんですよね。そういうコミュニティがたくさんあって、それぞれのコミュニティが独立していれば、今現在の経済価値とは違う世界を作ることができるのではないかと思います。

福田:国の法定通貨の中だけで暮らしていると、インターネットが全てのモノやサービスをコモディティ化させて、デフレを起こしてしまう。けれど好きなものの価値観が分かっている独自のコミュニティの中だけで流通する貨幣があれば、そういったデフレ圧力から逃れられるかもしれません。

中村:ぜひそうなってほしいと思いますしね。

福田:面白いですね!

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