沖縄は題材の宝庫
照屋:コロナがなければ、本当はもっともっと撮っていたんですけど、なかなか撮れない状況が続いています。今年の年末に沖縄でクランクイン予定だった作品も、来年に延期になりそうです。だから、「自分も撮りたくて」「もう脚本も上がっていて」という作品はあるんですけど、なかなか撮れないもどかしさがあります。東京を舞台にして撮ればいいのかもしれませんが、「沖縄に貢献したい」という気持ちもとても強くて。映画を通して沖縄の変わった風習、文化を紹介することで観光につなげるなど、いろんな意味で沖縄に貢献できるように、今のところは沖縄を舞台にしたものばかり撮っています。
福田:なるほど。僕は一昨年から沖縄と行ったり来たりしていることもあって、時々、沖縄県から講演会のご依頼をいただくんですね。その時もお話をさせてもらったことなんですが、沖縄本島とハワイのオアフ島はほぼ同じ大きさで、人口もほぼ同じなんです。オアフ島も沖縄も、100万人。ところが経済格差でいうと、沖縄はオアフ島の1/7になってしまうんですよ。その理由は「基地だ」と言う人もいますが、基地の依存度は11%もなくて、年々下がっている訳です。だから観光の要素は大きいけれど、それ以外のことが「産業化していない」ということに課題があると思っています。なので弊社では、沖縄でリゾート開発をしたり、ハイテク農業のビジネスを展開したりしているわけなんですけども。 そして沖縄は、エンタメのポテンシャルも、まだまだあると思うんです。その魅力に、沖縄の方自身が、気づいていないんじゃないかな?とも思う。だから沖縄の人がもっと自信をつけたら、飛躍的に経済は伸びるのではと僕は見ていますね。
照屋:そうですよね。先程の「映画は個人的なテーマが世界に通じるんだ」というお話じゃないですけど、小さい島といえども、沖縄の中だけでもいろんな人間模様があります。『洗骨』だって親を思う気持ちであったり、家族同志の確執であったり、自分の人生がうまくいってないことの悩みやコンプレックス……そういうことってきっと、万国共通じゃないですか。だからあんなに小さな島を舞台にしても、人の心に響くものさえつくれたら、勝手に日本中は喜んでくれると思いますし、海外でも喜んでくれると思っています。そういう意味では、沖縄だけでも、題材は山ほどあるんですよね。
福田:あると思います! だって、北部と南部じゃまるで違うし、中部も違う。全部違いますからね、沖縄は。
照屋:そうなんですよ。那覇を中心にしたらまた全然違うし、恩納村ではリゾート地のラブコメディ物語も作れる。コザではディープなアメリカとのかかわりも撮れるし、やんばるはそれこそ『世界ウルルン滞在記』の話じゃないですけども大自然で、電気も水道もないところで生きる人がいました。『北の国から』の「南の国から」バージョンだって、作れるわけですし。 じつは外側ばかり見ているだけで、内側は豊か。本当はいくらでも物語ってつくれるなと思っているんですよ。だから沖縄を舞台に、「こういうのが撮りたい」ってうアイデアが僕もいっぱいあって。早く、次から次へと撮りたいです。
福田:作ってほしいです! ゴリさんも関心を持っていただけそうなのでご紹介するんですが、今年僕のブログに、取材してルポした「沖縄の仙人哲学者”じょうぐち はるお”のお話し」*(3)という投稿をしたので、よかったらぜひ読んでみてください。その人は、沖縄の離島・宮城島で45年間たったひとりで暮らして、年金も、生活保護も受給せずに、一切のお金を使わずに生きた人なんです。
照屋:えぇっ。すごい人ですね。水とか、どうしていたんでしょう。
福田:雨水ですね。一昨年の夏に会いに行こうと思ったら、僕が行く日の3週間前に亡くなってしまった。彼はずっと「死んだら海に帰りたい」って言っていたそうです。で、彼が暮らしていたところの写真を全て撮って、お参りをして、好きだったというコカ・コーラとショートピースを置いてきました。……なんか、「そういう生き方があるんだ」って、ゴリさんのエスキモーの話じゃないですけど、非常に心に残ったんです。
照屋:拝見します。
福田:僕は会えず仕舞いだったのですが、友人の話によると、その人は絶対、蚊に刺されないそうです。僕なんか、全身に虫除けスプレーを何度もしたのに、その場所に行った時に40カ所くらい蚊に刺されたんですよ。きっと、自然と同化できた人なのかな、と思って。ゴリさんが行った秘境でも、きっと村人のところには虫はあんまり来なかったんじゃないかなぁ。
照屋:ああ、たしかに平気なんですよね。強かった。僕だけずっと、パーカーを頭からかぶって紐も締めていました。下もスボンの裾は靴下を上から被せて、体の中に虫が入って来ないように万全の態勢だったんですけど。
*(3)沖縄の仙人哲学者”じょうぐち はるお”のお話し