丸の内にコミュニティをつくろう
福田:そんなわけで、水代さんのインタビュー記事をいろいろ拝見していたら、「東京で最もオシャレな「コミュニティ・スペース」を作れる男」というNewsPicksの記事の見出しに吸い寄せられました。これは2018年に展開された三菱地所との共同企画「Marunouchi Happ. Stand & Gallery(丸の内 ハップ・スタンドアンドギャラリー) 」ですよね。
水代:ありがとうございます。丸の内のコミュニティづくりはずっと関わらせていただいていました。いまお店(cafe)もやらせてもらっています。
福田:そのお話がとても興味深かったんです。その計画は、「オフィス街の丸の内は、土日になると人流が消え、シャッターストリートと化してしまうのを解決したい」というのが事の発端だったんですよね。
水代:ええ。僕が関わりはじめた頃は、そうでした。
福田:今でこそ「マルシェ」って、都心でも普通にやっていますけども。水代さんはマルシェがまだあまりないような時から、土日に生産者さんとともにマルシェを開いて料理を提供するなどのアイデアで、人がたくさん集まるようになったんですよね。丸の内にコミュニティが生まれるなんて、思ってもみなかったんですけども、どういうきっかけでそのアイデアが生まれて、「週末がある街にしよう」と思われたのでしょうか。
水代:友達ができる街とか、出会いがある街のことをわかりやすくいうと……。人生の大親友とか、奥さんとか旦那さん、パートナーに出会える場所は、店でも街でも、すごく大事な思い出の場所になると思うんですね。それに「大親友が150人いるぞ!」っていう人って、あんまり信用できないじゃないですか(笑)
福田:わかります(笑)
水代:ただ、たくさんのコミュニティの中で、150人の人たちの気配を感じながら、そこを出たり入ったり、楽しんでいる人はいると思うんですよね。その時々で「今日はアート」「今日は読書」みたいな、そういうコンテンツを提供できる街になれば、すごく素敵になるな、というふうに思いまして。でもかつての丸の内にはそういうものがなかった。
皆さん、企業ですごく頑張って働いても、定年後、とくに男性のほうはコミュニティをつくるのも入るのも苦手なんですよね。奥さんを旅行に誘ったものの、女性のほうは地域で理事会とかママ友とか、いろんな行事があってつきあいもあって、すごくエンジョイしているから「あなた一人で行ってきたら」みたいなことになって。企業戦士が孤独になる未来はよくないなぁ、と思ったんです。なのでそういう出会いがある街になればいいだろうなという思いから、「丸の内にコミュニティをつくりたい」という提案をずっとさせていただいていました。
福田:「クライアントなき仕事」っていう感じがしますが、どうなのですか。
水代:「クライアントなき仕事」といえばそうですね。ただ、簡単に出せるアセットって結構あるんです。「形になったらバジェットをください」というと、いただけることも多くて。例えばデベロッパーさんだったら、「ここの場所をタダで使わせてもらっていいですか」とか。メーカーさんだったら、「御社のジュースを20ケース協賛してください」とか。すると「そういうことで寄与できるんだったらいいですよ」と乗ってくださって、最初の頃はそういう感じで始めることが多かったですね。
福田:なるほど。