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「けしからん!」が出なくなるために

丸の内の週末を激変させた仕掛け人 都市活性化の名人に聞く、スマートシティ考(後編)  Talked.jp

水代:そうですね。さっきの恵比寿とか自由が丘の話でいうと、僕は街づくりにおいては「競争する部分」と「共創する部分」、「2つのキョウソウ」が大事だといつも考えています。“競争”しながら共に創る“共創”ということで、タテの軸とヨコの軸とを両方チューニングしていかないと、街づくりっておもろくならないな、と。そう思ったときに、一般的にイケてるといわれる恵比寿、自由が丘…どこでもいいんですけども、タテの軸、いわゆる事業者の軸は全部単体ずつではめちゃめちゃイケてるんですけど、「じゃあ、みんなでヨコの軸で何する?」みたいな、事業者と住民をつなぐ「ヨコ係」の人材はまだまだ少ないんですよね。だから人材の育成とはまた別に、学校をつくろうとは思っているんです。例えば日本橋浜町でいうと僕らにはまず「1階には手仕事と緑の街の象徴を見せる」という大きなコンセプトがあります。それに共感していただいた周囲の施設やお店はみなさん、緑のプランターを置いてくださる。「まずは緑を増やそう」みたいなことで。
で、ヨコ軸というのはさらに「けしからん!」を排除していくことでもあるんです。そうしないと、絶対に進まないんですよ。例えば僕らもお祭りでいろいろとがったことを考えて、「ドイツからすごいDJ呼んでライブをやるので、道路は全部止めてお祭りします!」なんて言ったら、絶対に「けしからん!」って言う人、いますよね。

福田:いますね!

水代:実際、盆踊りですら「けしからん!」は出てくるんですよ。でも、みんなの日常には「けしからん!」はあっていいんです。例えば僕の友達のそば屋でだって、「ランチで1800円のてんぷらそばを食うやつなんているのか!」って言われるらしいんですけど、実際は毎日、大行列なんです。だから別に、事業者ごとの「とがり」はあっていいし、もっとみんな、研ぎ澄ませていいと思うんです。僕もカフェオーナーとして、「別にこのコーヒーのことを理解してもらえなくてもいい」「でも、そもそもこんな空間でこんなにおいしいカレーを1000円で食えて、あなたラッキーっすね」くらいに思っています。事業者としてはそれでいいんですけれど、「ヨコの軸」係の街づくりプロデューサーとしては、「分かるやつだけ分かればいい」「みんな来なくていい」なんてことは言えないです。だから僕たちは徹底的に手で仕事をするとか、徹底的に緑を大事にする。さっきのCSRみたいなところでいうとですね。
例えば街のブランディングで、「フードロスで、食べ物を一番大事にする街にします」というと、それは町内会長だろうが誰だろうが、「けしからん!」とは言いません。そして「フードロスを大事にする」と言うからには、自分たちがやっているマルシェで残った野菜は全部自分たちで買いとって、近所の企業などに「昨日までやっていたマルシェの野菜なんですけど、月曜日までに誰かが買わないと捨てられるんです」と言うと、(売っていたときと)そのままの値段でみんな買いに来てくれたり、「みんなでお昼ご飯食べよう」と声をかけると、僕ら事業者同士は「競争」(相手)ですけども、「俺たちは“みんなで食べ物を大事にする街”というブランディングをするぞ」というところはお互いに握っているから、マルシェで売れ残った野菜でつくったメニューを楽しみにして食べてくれたり。さらに残った野菜は僕が全部自分で買って、本当はここで会食みたいなパーティーをしたいんですけど、コロナ禍ではお弁当にしてみんなに配る、ということもしました。地元の人たちも、「俺たちはフードロスやってるよ」っていうことに対しては、「けしからん!」がない。
ただ、1800円のそばとか700円のコーヒーとか、タテ軸がとがりまくっている街はいっぱいあるので、そこはヨコ軸で、みんなが行けるようなところを探すのも楽しいなと思っていて。みんなで一緒にやる部分と、それぞれインディペンデントオーナーとして戦う部分と、両方がやっぱり大事だと思います。

福田:たしかに「タテ・ヨコ」理論が分かってないと、本当に「けしからん!」とか、抗議が起きますよね。
タテばっかりやってると、「企業ばっかりお金儲けしやがって」となるし、ヨコだけでもあまり大きな展開が見込めないものですよね。コミュニティというのはやっぱり、スモールから始まって徐々に、ということだから、まずはタテで頑張っている企業が、ヨコのことに気付かないと駄目ですね、バランス的には。

水代:そうですね。

福田:ヨコは多分、ずっと何らかの形であるでしょうから。才能あるオーガナイザーがいないようなコミュニティだとしても、毎月集まって何らかの形で「今年の夏祭りどうする?」とか、「花火大会はどうする?」とかやってるわけですよね。そこにタテで、主に企業の人たちが、どれぐらいそこに気付いていけるか。そこが本当に、街の活性化につながるかどうかの分かれ道になるのでは、と思います。

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