地域コミュニティでは「生産性や効率」不要
福田:冒頭でお伝えした自分の新刊でも書いたんですが、ITの40代ぐらいの人たちがどういう人生を歩んでいるか、ゲーム会社「gumi」 の創業者の國光宏尚さんから聞いた話が面白かったんですよ。パソコン世代でパチパチプログラミングしてそれで成功している人だけが港区にいるんですね。で、成功したら急に20億とか40億とかお金を持っちゃうから、「ヨージ・ヤマモトでも着てみようかな」ってなるけど「でも、やっぱユニクロでいいな」みたいになって。で、「テスラにでも乗ろうかな、だけどGOタクシーのアプリでやっぱいいや」となる。で、女の子にモテたこともあまりないから、ちょっとキャバクラ通おうかってなるけど、あんまりモテない。で、40歳ぐらいで結婚して子どももできて、お金はあって、事業もそこそこうまくいってて、仮想通貨かサウナで整うかな、というのが「今ココです」と。すごく分かりやすかったんですよ。だからお金がお金を生むっていうことを追求する人もいるでしょうし、みんなしたいと思うんですけど、それだけじゃやっぱり全然満足を得られない。そういうところでサウナに行ったり、やっぱり祭りやろうよってなったりする動きになってきているのかなと。こういうのは単なる懐古趣味なのか進化なのか、どっちなんでしょうね。
水代:両方、あると思うんですよ。ここみたいにカフェをやっていると、今は「固めのプリンにチェリーと生クリーム乗せて、その写真を撮ってインスタにアップする」という人が多いせいで、プリンやクリームソーダがとんでもなく人気なんですよね。夏になったらみんな「かき氷だ!」って言いますし。僕はずっとカルチャーを追求して、70年代ブームのときに青春だったんですが80年代にはそんなに要素ってないし、ブームはこないと思っていたんですけど、いまは80年代っていうとそれこそDJでも杏里とか山下達郎のレコードがヨーロッパでは250ユーロくらいするのが普通だから、「80年代すごいきてるんだな」みたいなところの懐古主義というか。若い人たちにそのゾーンがウケていると思うんですけども、街づくりというところでは、じゃあそのお祭りをそのまま復活させて、それがすごくサスティナブルな仕組みかなのかというと、「それはないな」と思うんですよね。仕組みに手を入れる部分は入れていくし、グラフィックの問題もありますし、みんなの連絡の仕方だったり、いろいろあるんですけどもそれも含めて、すごく面白くて。ただ、そこの地域コミュニティにおいては生産性とか効率っていうものは全く不要になっていく。むしろそこで生産性を上げたところで、例えばみんなで予約した飲み屋の時間に、30分多く、時間空くぞ!みたいなことで(笑)そこで結果を出しても、誰も褒めてはくれないんですけど、でもそれが僕にとっては学びだったりするんですよね。
福田:うーんなるほど。面白いです。
水代:結果を出しても褒められないけど、毎日来ると褒められる(笑)かき氷をお祭りで早く提供する方法をみんなに提案しに行ったとき、「それ仕事じゃないのに、そこまで首を突っ込んで大丈夫なんですか」とか言われるんですよ。年末にけんちん汁を作っているけど毎回ダンドリで揉めているから、「ちゃんとレシピ、作ったほうがよくないすか?」って仕事っぽいことを言うと、「大丈夫? この子…」みたいになっちゃうのが学びでもあるんですよね。