アフターコロナの街づくりは、 「ストリート」「スマート」であれ
福田:そういうことを楽しく、積極的にやって成功されている水代さんなので尊敬しかないんですけども。最後の質問になりますが、アフターコロナ、水代さんのコミュニティづくりで「これやっていくよ」というのを差し支えのない範囲で教えていただけますか。
水代:この日本橋浜町は道路とか公園とか、変えられるところがまだまだたくさんあると思っています。まずは「僕らのような街づくり団体が入ったことによって、がらっと変わったよ」というところを出していきたいですね。緑道とか道路とか、思いっ切りハードの部分もいじって変えていきたいと思っています。これまではソフト面での仕掛けが多かったので。
あとは先程、「コミュニティをつくれるようにはなった」とちょっと偉そうな大きいこと言いましたけども、そのつくったコミュニティーがちゃんと、仕事やプロジェクト、ものを生んでいくことにも挑戦したいな、と。そこへの道はもっと細やかなチューニングを上手にやっていきたいなと思っています。誤解を恐れずにいうと、「ちょっと来てほしくないな…というような常連さん」がいっぱい来ると、コミュニティにとっても不都合というか、ハッピーな結果にならなくなってしまうから。
福田:よくわかります。本当にいま、むちゃくちゃ求められているいちばん大事なお仕事をされていると思います。僕もできることは限られますけど、できることの8割ぐらいしかできないヘルパーとして(笑)、何かお手伝いできる余地があれば行きたいと思います。
水代:多分、8割出すと浮いちゃいます(笑)
福田:3割ぐらいでいいかな(笑)
水代:極端な話、サボり続けてみても、「いることで力になる」という方は、それがよかったりするので。
福田:「気にしい」だと、できないですね。
水代:はい。僕も「気にしい」だから、古い体質のコミュニティでは空振りばっかりしていた時期がありました。
福田:それはそうですよね。コミュニティに入ることって、いつも「雪かき理論」があると思うんですよ。雪が降って、自分の家の前だけ雪かきするんじゃなくて、お隣とか高齢者の家とか、本当はみんなでやるべきところを自分だけやらないと、村八分にされるんじゃないか。つまりこれ、忖度文化じゃないですか。そういうことについて、何か都会的な、スマートな解決策ってないのかな。僕は自由でいいじゃないかと思うんです。「忙しいから10分だけ参加するよ」とかね。みんな文句を言うかもしれないけど、「そこは自由ってことにしようよ」とならないと、苦しいばっかりですよね。
水代:まさにそこなんですよ。その「自由でいい」っていうことを、もっとたくさんの人に分かってもらわないと、と思います。やらなくていいのに、雪かきをしないことでもごもごしちゃう人が増えちゃって……という問題がすごくあるので、そこをもうちょっと、みんなにとっても分かりやすい問題に変えていくとか。
例えば、地域コミュニティにどっぷりの地元の子どもは、近所の歩いて5分で利用できるトイレを100個以上把握しているんです。一方で、タワマンの中しか知らない子は、家の鍵を忘れた瞬間、可哀想なことになる。それって、大問題だと思うんですよ。街にはこんなにきれいなトイレが100個以上あるのに。それを知っているか知らないかは、べつにお祭りにめっちゃ参加してるとか、そういうことは全然問わないし、みんなのためにうちの店も開放しているし、それでいいと思っています。そういうところから伝えていかないといけないなっていうことで、さっきお話したLINEの防災情報も強化しているんですよね。防災の情報と一緒に、この街では犬を飼ってる世帯が多いというデータがあるので、「災害時に愛犬とどう逃げるか」みたいな情報も入れたりしています。僕らはフリーペーパーの編集もしているから、新しく街にきた人にぜひ知ってほしい古い情報と、古い人にぜひ知ってほしい新しい情報をたくさん折り混ぜて見てもらっていますね。
そういうのを一個一個分かっていってもらえないと、本来自由でいいのに、「来たからには頑張ろう!」とし過ぎちゃう人が出てしまうから。そういうことをできるだけ平たく、たくさんの人に伝えれば、ヨコ軸のつながりも強くなっていくなと思って。
福田:まさに、「ストリート」で「スマート」であれ、ということですね。でも衝撃ですね。たしかにタワマンで鍵を忘れていった子は、他の選択肢がわからないというのは……気の毒ですよ。かつての長屋文化のような、ちょっと親戚に子守をお願いして…なんていう「1階文化」があれば、そんなことはなかったわけで。全部、メイクセンスするなと思いました。
そういう意味では、「タテ」「ヨコ」両方をつなぐという、極めて珍しいコミュニティープロデューサーの水代さんでした。今日は本当に、ありがとうございました。
水代:ありがとうございました。福田さんのご考察が鋭過ぎて、僕もおしゃべりし過ぎてしまいました(笑)
福田:とんでもないです。またお目にかかれることを楽しみにしています!
(了)
(前編へ)