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街を歩いている起業家が面白い②

福田 淳の最新本『ストリート系都市2022』発売記念! PIVOT代表 佐々木紀彦が特別インタビュー(後編)  Talked.jp

佐々木:街にはいろいろなヒントがあるということで、よく分かりました。特にこれからの街で注目されているところはありますか? 先程も神田など、ヒントが出てきましたけど。東京ってそもそも面白い街じゃないですか。

福田: 僕は四の橋商店街にポテンシャルを感じます。というのは、電車の便があまりよくないので。五反田と白金の間は、家賃も意外と安いんですよ。あの辺は昔ながらの商店街がいっぱいあって。麻布十番もいいんですけど、今やメジャーだから、麻布十番商店街の夏祭りと言ったらもう歩けませんよね。でも四の橋商店街まで行けば、相当文化的で面白い人と知り合えるんですよ。 あとは京都も面白く生まれ変わっていますし、熊本なんかも福岡なんかも面白い人が出てる。あとは秋田が面白いなと思いました。秋田市ってついに30万都市じゃなくなったんですよね。

佐々木:過疎で。

福田:ええ。人口が減っちゃって。ところが、先日お会いした丑田俊輔さんという方が代表の、秋田のシェアビレッジがとてもよかったんです。最初はシェアハウスのような形で古民家を改造してやっていたんですけども、それが評判を呼んでリピーターが増えたので、ビレッジごと会員制にしたんですよ。それで成り立っているので、すでに「小さな国家」運営ですよね。素晴らしいシャワーときれいな湯船があって、トイレはちゃんとウォシュレットが付いてて、そのインフラが整っていれば、あとは茅葺きだろうが古民家だろうが楽しいと思うんですよ。でも田園風景はちゃんと残っていて、コミュニティも知的な人たちが集まるのでクォリティも高く、暮らしも安全。都会と対立することのない、多拠点としてのシェアビレッジの可能性を感じましたし、ああいうスタートアップはたぶん成功するなと思いましたね。 もうひとつは、田沢湖で「タザワコサウナ」を運営する八嶋誠さんの話も面白かったです。行政と話をして、知事からスタートアップの支援ももらって、最高の場所でテントサウナの営業許可を得て、それもすごくうまくいっている。サウナを出たらそのオーナーが挽き立てのコーヒーを振る舞ってくれるというセットになっているんですけど、値段も安くて原価もかかってなくて土地代もかかっていない。ああいうビジネスモデルは街を見ていないとできませんよね。田沢湖って実は、真冬でも絶対に凍らない湖なので、水風呂はすでにそこにある。ビジネスモデルとして優れているということで、その2つのスタートアップが面白かったですね。

佐々木:やはり街づくりというのは、今もっとも最先端なのかもしれませんね。

福田:そう思います。場所に価値がある。だから、ロシアはウクライナにこだわるわけですよね。そのこだわりがなければ、別に「メタバースウクライナ」でいいじゃないですか。プーチンはリアルウクライナでなければダメというのは、 場所に意味があるからですよね。

佐々木:ですよね。メガネの「JINS」を手掛ける代表取締役CEOの田中仁さんは前橋で「JINS PARK」を、先述のレオス・キャピタルワークス株式会社の藤野英人さんは富山で古民家を購入したり、クラウド名刺管理SansanのCEO寺田親弘さんは徳島県神山町で高等専門学校をつくったり、起業家が地方創生に注目する動きが高まっていますよね。

福田:以前は「資産価値=土地」の価値だけだったんですけども、ただそれだけでは、人は増えないことが分かってきました。コミュニティに価値があるのだから、場所は別にどこでもいいじゃないかと。Sansanがやっている徳島県神山町はいっぱいギャラリーがあって、コロナ前も結構、グローバルに人がいましたよね。イギリス人やアメリカ人とか、アジアやタイの人も来て工芸をやったり、文化交流もいろいろありましたよね。そういうことで言うと、村おこしとか地域創生っていうのは「おらが村」って発想じゃなくて、そのストリート感覚を持ってキュレーションしていけばもっと面白いことになると思うんですね。例えば広島で、NPOのピースウィンズ・ジャパン (PWJ) の代表大西健丞さんが設立した国内災害支援団体のシビックフォースの生きた美術館がありますよね。美術館と言っても、大きな家が1戸あるだけなんですよ。でもそれが目玉になって、みんな行くわけですよね。だからアートとか植物とかコミュニティーが一緒になったとき、都市の機能が作られ始めると思いますね。

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