数字が見えない“取次”問題
福田:ここまで、出版界の現状問題についてだいぶ出ましたけども、他の問題点についてはいかがでしょう。
田中:問題はやはり、福田さんが、「紙はあかんのちゃう」って思われた問題意識と一緒で、取次の問題も、大問題です。
福田:そうですね、分かります。先程も「大川隆法を目指す」といって出版社を買った話をしましたが、そしたら次の悩みが出ちゃったんですよ。自分で好きに表現ができるし、「これはいいな」と思ったら、取次問題ですよ。M&Aを決めた理由のひとつに、創業43年の歴史がある出版社だったことで、取次との料率が非常に良かったんです。それである取次に、「これからよろしくお願いします」と挨拶に行ったら、「お宅に経営が変わったことだし、そろそろ料率も変えないといけませんね」とか言われるんですよ。そんなバカなって。契約書もありますけど、ここはどこの国なんですか?っていう感じで。しかも「この本、どこの書店でなんぼ売れたん?」ってスタッフに聞くと、その情報はないという。それでしばらく経って、「これ、いつになったら売り上げが確定するの?」って聞くと、「7カ月後です。返本があったときに確定します」と。そんな商売、あり得ますか?って愕然としました。だったら出版コードなんて別につけなくてよくて、Amazo物販として売るとか、いっそマルシェで売るとか、そのほうがよっぽどマーケットのことも、売上も分かるんじゃないの?と思いました。すごいですよね、売っている数が分からずに成り立っている巨大産業……と言ったら出版なんですよね。
田中:それで市場全体で、1兆5000億円(売上)があるとか、信じられないですよね。もう、すごい謎です。何が恐ろしいって、1回納めて、どれだけ売れたのか全然教えてくれないのに、ある日「半分余りましたからお金返してください」って言われる。そんなバカな、です。だからこの仕組みをどう壊ししていけばいいのか。
福田:出版社が一番怯えるのは取次で、しかもこの人たちに至っては、何も情報を出さないことによって大手として君臨している。不思議なことがあるもんですね。私も半世紀以上生きてきて、社会のことを知っているようでいたけども、全く知らなかったな、と。
田中:次から次へと戦う相手が出てきますよね。出版という、あえてしんどいところにいかなあかんと思い始めたところに、先程のクラウドファンディングのファンディーノさんでは「仲間はいるやん」という結果が出た。これは大きかったですね。