書店はもっと“セレクト”しよう
福田:出版を再び活性化させるためには、もちろん出版社を責めるだけではなくて、極端に言うと、みんながベストセラーばかりを買わないライフスタイルを作らないとダメですね。そうじゃないと本屋って、ホリエモンと落合陽一さんの本しか並ばないですよね。
田中:あと、ひろゆきさん(笑) 昨日も本屋に行ったんですよ。そうしたらもう面陳が、平積みが、全部ひろゆきさんの顔なんです。「書店はこれでいいのか」とさすがに思いましたね。
福田:書店も委託販売から買い取り制にして、手数料を上げて自分たちの目利きを育てないとダメです。そうでないと、「売れない本は返しゃいいんだろう」ってなる。書店も本を「借り物」扱いしているから「場所貸し」になる。だから貸しギャラリーではダメで、自らキュレーションして本を並べないと。でも、たとえ小さくてもそういう書店のほうが、今は逆に勝っていますよね。映画「ユー・ガット・メール」(1998年)では、トム・ハンクスがメグ・ライアンと、お互い名前も分からないまま交際に入るんですが、のちにトム・ハンクスは大手書店のチェーンストアの御曹司で、メグ・ライアンはお母さんが経営する絵本の店で働いていることがわかります。映画はチェーンストアが勝つわけですが、ネット時代が来ると逆に、メグ・ライアンの目利きある本屋のほうが勝てる可能性ありますよね。
田中:自分たちでセレクトすることに非常に価値が上がっているので、押しつぶされるものではなくなったと思いますね。赤坂にある「双子のライオン堂」などは、選びに選んだ書店ですし。六本木交差点にある「文喫」も、入場料を払うという書店で貴重ですね。平積みや面陳は絶対やらない。セレクトした本は1冊しか置かない。それが売れたらまた注文を入れるスタイルです。
福田:分かりやすい。だから大量に「これ買えよ」って、売れ筋ばかり並べるのは、大量生産大量消費で、20世紀的でダサいですね。個人が見えるのがネットメディアの特徴なのに、同じ本ばかり読まされて、みんな同じ思想になっている。
田中:民意は無視しないけども、「それでいいの?」とは思いますね。うちの会社で出版予定の最初の3冊も、物書きとしては無名の人ばかりです。そこは僕が読みたいし、その人に書いてほしいからなんですけども。その人たちはどうしていたのかというと一人でやってるYouTuberと同じで自主的にnoteに書いていたら、多少なりとも読者が付いた人たちです。「ぜひうちで書いてください」とお声かけさせていただいたら、「全く無名ですけどいいんですか」と。なので僕からも「儲かりませんよ(笑)。でも、最低限、印税を倍にするから一緒にやりましょう」とお伝えしました。だから著者も、仲間ですよね。
福田:アイデア1つで変えられる可能性が高くなったのが、ネット時代のいいところですよね。だって20世紀だったら、「フジテレビ」と「アルマーニ」じゃなきゃダメだ!みたいなことばかりで、選択肢がなかったわけですもんね。