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カルトを出て見えた「社会」

カルト宗教を自力で抜けた男が語る洗脳・国家・「寂しさ」の本質とは(前編)   Talked.jp

福田:で、ノリちゃんが教団を辞めると言い出して、一家の大事件になった、と。

佐藤:もう大事件です。毎週泣いて母親から電話がかかってきて。「お願いだから」みたいな感じになって。当然ほっといてはくれないんですけど、頭にきたので、「だったら正面からけんかを売ってやる!」と思って、教団の歴史と聖書のいきさつなどを調べまくって、めちゃくちゃ分厚いPowerPointを作って。PowerPointは得意なんですよ。「これを読むまで、一切オレに話しかけるな」と。で、うちの母親もそれを見て「あれ? あれ?」みたいな。

福田:説得力があったんだ? そのパワポに。

佐藤:はい。「もしかして……もしかしての、もしかして」っていう。洗脳を解くっていうのはダムの壁と一緒で、1%の穴をパンって開ければ、あとは全壊していくだけの話で。その最初の一点をどう開けるか? そこだけなんですよ。

福田:それが難しいんだろうね。

佐藤:難しいです。みんな枝葉の議論をしちゃうから。だからそこは触らないで、根本的に議論だけ、聖書をバッサリ切るだけ、みたいな感じで。いろいろあって結果1年で、うちの奥さんと奥さんの実家と、うちの実家と弟夫婦と妹夫婦と、あとの仲の良かった信者友達10人ぐらい。そんな感じで全部やめさせて。それが2006年2007年とか。

福田:ついこの間のことじゃない。

佐藤:そうです。当時は、「教団以外の人はサタンの人なので、仲良くなってはならない」と思っていました。だからときどきあいさつ程度ではニコニコしているけれど、心の中で「やばいやばい、サタンサタン」と思っているから、教団外の友達はいなかったんですよ。

福田:ノリちゃんと会ったのは、たしか2007年か2008年だけど、(洗脳は)もう解けていたんだね、あのとき。

佐藤:ですね。2007年ぐらいに教団を脱退したとき、週末に1人で公園を歩いていて、「オレ、本当に友達いないんだ。友達ゼロだな」って。教団から出たからなんだ、というのをしみじみと感じて。だからいまの人脈って全部、2008年以降なんです。

福田:覚えてるよ。ノリちゃんとは、アニメのプロデュースのことで最初に西麻布で会って、質問はとにかく100ある奴だな、と。そのあと友達になってもらっていろいろ話を聞くと、本当に生まれたての子どもの好奇心で、ティーンが初めて女の子に初恋したみたいな感じで、社会を見ていたよね。

佐藤:まず女性というものが何か、よく分かっていなかったですね。男は男同士で分かるけれど、全く異質で。例のTGCって女の子ばっかりじゃないですか。だから女性がどのように考えるのか疑問もありました。だから女子の飲み会とかあると、「混ぜて」みたいな感じで見て、黙って聞いてるみたいなことをやっていましたね。教団にいて、外のことを知らないから、(女性からみると自分は)男でも、無害に見えたようです。それで友達になった人からいろいろ話を聞いて、「そんなことなんだ」って気付いたのが、「そもそも消費のほとんどは、女性じゃん」と。この人たちが市場を、マーケットを動かしていて、こんな感覚でものを選んでいるんだなっていう気付きがありました。そこからTGCのときも商品開発をするために、女子の飲み会に顔を出して「これ、どう思う? 買いたい?」っていう話を説明なしで、そのときの反応から「売れる・売れない」を判断してたんですよ。

福田:面白い。男の子だけで固まると、「女の子が入ると面倒臭いから嫌だ」っていうね。男だけが笑ってるシチュエーションってあるけど、女性が笑うと男も笑うんだって。釣られてね。だからやっぱり性としては、女性のほうが強いんだろうね。

佐藤:強い。女性のほうが長生きしますしね。日本は男尊女卑とか言うけど、それは社会的な、表面的な話であって、家庭の中では女性はもう、かかあ天下ですよ。

福田:そのほうがうまくいくって言うし。まあ、もともと能力が低いんだろうね、男性のほうが。

佐藤:そうですよ。男はバカですよ。だから女性のほうが賢いんじゃないですか。

福田:すごく大きな組織を回して、いくつかの少ないテーマで物事を達成しようと思ったら、男ばっかりがいいね。なぜならバカだから。

佐藤:なるほど(笑)

福田:でも特別なことをやろうと思ったら、女性じゃないと無理だろなあ。

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