福田:クリス・アンダーソンが書いた「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」(2012/10) という物作りの本がベストセラーになったじゃないですか。背景には、モノを作るに大手資本がお金出さなくても、クラウドファンディングで集めて、実際のモノづくりは3Dプリンターで必要な分だけ作ることが可能な時代になりました。
僕は以前 映画会社にいたんです。新作映画を作るときは、制作委員会方式といって、みんなでお金出し合うんですけども、純然たる投資をする会社って殆どないんですよ。みんな業界関係者で、いわゆる窓口権というんですけども、DVDの販売会社は映画が公開された後にDVD出させてくれ、ネットの会社はオンデマンドの権利くれ、テレビ局はテレビで放映させてくれって、別に悪い意味じゃなく、そういう利害、利権みたいなのがあって、成り立っていたんです。ただ問題点は映画でも音楽でもゲームでも、もともと作るその原版の権利を作る前に切り売りしているわけです。例えば100の権利があるとして、みんなでお金出し合うと20ずつとか分散することになる。すると、公開後にいろんなメディアが出るので、いざマーケティングで活用しようというときに、権利者みんなの合意を取るのが大変なんです。いろんな企業が入っている制作委員会だと、月に1回集まって決めるんですけども、物事の進行がのろいんですよね。 だから、クラウドファンディングが普及することによって、ますます純然たるモノづくりが活性化させるといいなぁと期待してます。
米クラウドファンディング大手のキックスターターの年次報告を見ますと、リアルなモノ作りが多いですが、ゲームや音楽などのエンタメ制作物もありますよね。これらの娯楽作品は、クラウドファンディングで資金集めすると、出資者はその作品のリワードがもらえるだけで著作権の一部も保有できるというケースはあるのでしょうか?
山本:基本的にそれは全くないです。
福田:そういうことでのトラブルみたいなことはないのでしょうか?
沼田:去年、オキュラス・リフトという仮想現実が見えるハイテクのウエアラブルのデバイスが出て、確か最後にFacebookが2000億円以上で買収したんですが、あれ実はキックスターターで初期にプロジェクトを起案していまして2億円ぐらい集めました。で、最初に投資した人はまだまだクオリティが低い初期商品しかもらえなかったので、最終的に会社が大きな収益を得た際、「俺らは最初の時期を支えたのに、金銭的な報酬はもらえないのか」とネット上で嘆いていた人がいたそうです。ただそういう風に嘆いていた人数は少なかったとも聞いています。初期に支援したプロダクトの成功を純粋に喜ぶ人も多かったそうです。購入型のクラウドファンディングって、アイドルの支援ではないですが、金銭的なリターンがないというところがある種、面白いのかもしれないですね。