福田:いや、面白い。話はそれるんですけど、ちょっと前にハンバーガーチェーンでナゲット食べたら、ビニール入っていたってニュースがありました。あれ、何が問題かと言うと、やはり企業のPRの対応が20世紀的と思いました。さすがに「いや、いつも入っていますよ」と言うわけにはいかないんでしょうけど、説明している企業の人が感じ悪いのがいかんなぁと。さっきのジョブズの話じゃないですけども、クラウドファンディングの企画、提示を見ると、やはり写真とか動画がうまい人にお金集まっているふうに見えるんですよね。テクニックかもしれませんが、「ちょっと俺の一人語り聞いてよ。実はこれをつくりたいんだ」という情熱がうまく伝わる人にお金が集まっている。そういう意味じゃ、電通でご経験があってというのもなんですけども、個人のパーソナリティーを素直に出せるようなトーン&マナーが大事になってきますよね。
山本:おっしゃる通り、最近、クラウドファンディングって、みんな、動画のスキルがどんどん上がってきて、ほとんどCMみたいにすごくよくできたのもあるんですよ。面白いのは、普通は「こういったものを作ろうよ」って実際に物が作られて、最終的にそのCMが作られると思うんですけど、今のクラウドファンディングだとまずCMから作る。そこから、そのCMで語られている世界観に人が集まってきて、それを実現させるという。なんかグルッと物の作り方が変わってきているんですよね。
福田:そういう動画のひな型としても、Appleが与えた影響が、かなり大きいですよね。必ずジョナサン・アイブの新製品説明動画が関西弁ギャグにマッシュアップされちゃいますけど(笑)、ソニーとかパナソニックで、開発担当部長が出てきて、「俺はさ」とか、そういう動画CMないですよね。まだ代理店とかみんなで作っているからですよ。別にみんなで作ったっていいんですけど、クラウドファンディングとかソーシャルとか、クラウドの世界はもっとパーソナルな感覚をだしていかないとダメなのかもしれません。
沼田:例えば今の時代、皆さんのような学生さんがフリーペーパーを出そうと考え、制作費をまかなうために協賛してくださいって企業をまわると、担当者の人はほぼほぼ断ります。いわゆる費用対効果がわからないからですね。その時の断り方が面白くて「個人的にはすごいいいと思うんだけど、会社としてはちょっと厳しいよね」みたいなことを言う。もし本当に担当者がそう思ってくれているならクラウドファンディングで資金を募れば、その担当者は支援をしてくれるかもしれないですよね。もし担当者が支援してくれるとすると、それって今の日本の問題をあぶりだしてくれているかもしれません。例えば日本のメーカーなんか特にそうだと思うんですけど、個人がつくりたいものと会社がつくりたいものとがリンクしている感じがしない。作る側に本当の想いがこもっていないとしたら、当然買う側からしても何となく不安感を感じますよね。それに比べて、Appleの製品は作っている側も買う側も好き、っていうことが自然と感じられて安心して買えるのだと思います。今回、マクドナルドなんかも問題が大きくなったのは、実は社員や現場の人たちが商品をちゃんと愛していなかったということが根本の問題なのかもしれません。システム化されたビジネスってあまりにも人間味がなさ過ぎるから、クレームもとどまることを知らないし、社員含め体をはってでも守ってくれる人が少なかったような気がしますね。
福田:なんか、フランスのマックだけ売り上げが上がっているそうです。なぜなら本部から指定されたパンがいまいちだから、もうちょっとフランスふうの味付けにしようってやったら、それが受けたんです。本来ならグローバル企業であればあるほど、フレームで作るんで、ローカリゼーションって許さないんです。でも、僕は、本当のグローバル企業こそ、カントリーストラテジー(国ごとの戦略)が要ると思います。理念は共通なんだけど、その地域に合ったモディファイ(修正)をやるというか、クラウドファンディング的な発想を大企業も取り込む必要があるんじゃないかと。
山本:今、私たちなんかよりも学生さんの皆さんのほうが多分、そういう「嘘を見抜く力」が大きいんじゃないかなという気はしています。
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クラウドファンディング総まとめ[後篇]