お手本はジョブスのプレゼン!
福田:一方で不思議なのは、僕、バブル世代なので「いいスポーツカー欲しい」とか、「ブランドもの欲しい」とか言って20代30代過ごしてきたんですけども、最近、「物が売れない」とか、「欲しいものがない」とか言われていますよね。そんな中、クラウドファンディングがこんなモノが欲しいというニーズを再発見させているのはどういうことなんですか。みんなと同じような、大量生産のモノは欲しくないけど、自分にフィットするモノだったら買ってもいいってことでしょうか。
山本:やはりつくられたマーケティングというか、古い意味でなんかいろんな属性調査をして「大学生の女の子にはこれだ」ってつくられたものに、私たちは心を動かされなくなっているように思うんですよ。クラウドファンディングのサイトのプロジェクトを見ると、どんなばかっぽいツールだったとしても、それをやっている人の「これ、あったほうがいいじゃん」という思いがあるから、なんでこれが生まれなくちゃいけないのかという背景が嘘っぽくない。これが、クラウドファンディングに惹かれる人が多くなっている一因じゃないかなと思います。
福田:なんか機能とか、贅沢さとかいうのを越えて、山本さんの本の帯にもありますけど、「1人の変わり者をリーダーにする」というのも一つの切り口としては面白いですね。「こんなの誰が欲しがるんだ」というのがヒットしちゃう。確かに、そういうものは、企業のマーケティングとか、プロモーション的な発想では出てこない。やはり変わったアイデアマンがいて、何か最大公約数に向けて調査して生産したものじゃなくて、「俺、これ欲しいんだ。他の友達が欲しいかどうか知らん」というようなものがヒットしたりするというのは、クラウドファンディングの特長かもしれませんね。
沼田:なんか、スティーブ・ジョブズのプレゼンみたいなものと、すごく似ているなって思うんですよ。ジョブズのプレゼンがかっこいいと、インターネット好きな人は特にそう評価しますよね。もちろん、ジャパネットたかたさんの売り方も1個の売り方だと思うんですけど、なんかジョブズ的なマーケティングというのはすごく先進的だなと。「僕はこういう人間」であるという生々しい自己紹介から始まって、「なぜこういうことを考えるに至ったのか」のストーリーを説明し、「世の中、俺と一緒に前進させよう」って夢を語るみたいなことで締めると、みんなが「おお~」ってなって、なんかその思想に共感したコミュニティーつくりがマーケティングそのものになっているといいますか。
だから、例えば20世紀は「い・ろ・は・す」を売るにしても、榮倉奈々ちゃんを使ってCMでニコッてさせて売るというのがいわゆるマーケティングだったんだと思うんですが、21世紀のインターネットを上で起こっているマーケティングは明らかに違う。福田さんみたいな人が出てきて笑、ある商品の開発秘話を熱っぽく語る動画が口コミで広がった方がはるかに売りにつながる。クラウドファンディングっていわゆるその21世紀のマーケティングそのものだと思っています。人の気持ちを動かすということが一番最初にあるからこそ、作りこみのやらせは通用しない。本当に想いがのっているコミュニケーション、生っぽい表現というか、そういうことを真剣に考えていく必要がある。「このタレントは別に命をかけてこのプロダクトを作ってないだろう」と思われてしまうCMを流すぐらいだったら、本当に作っている開発者が情熱大陸っぽいタッチで語った動画を見せた方が、人はその商品が欲しくなるみたいのが、今の時代なのだと思います。