クラウドファンディング総まとめ[後篇]
日時:2015年1月13日(木)
場所:成蹊大学 吉祥寺キャンパス 坂井直樹ゼミナール
山本 純子 氏 (写真 中央右)
株式会社アーツ・マーケティング代表。1997年、慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。オンラインゲーム会社の立ち上げと上場に関わった後、2009年、慶応義塾大学大学院アート・マネジメント分野修士課程に入学。同年末にITの力で芸術を広めるために同社を立ち上げる。
沼田 健彦 氏 (写真 中央左)
株式会社ワンモア代表取締役CEO。1981年生まれ。東京大学卒業後、電通で営業を経験。その後、中学~大学の同級生が起こした「イミオ」での取締役経験を経て、起業。2011年、モール型クラウドファンディングサイト『GREEN FUNDING』を立ち上げる。
福田 淳 氏 (写真 右)
実業家。ソニー・デジタル エンタテインメント 社長。
1965年生まれ、日本大学芸術学部卒。1998年、スカパー!衛星放送「アニマックス」「AXN」の立ち上げに関わり、2000年㈱ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント Vice President を経て現職。
構成:福田千津子 撮影:越間有紀子
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クラウドファンディング総まとめ[前篇]
クラウドファンディングは根付くのか?
福田:会社の社長やっていると、「投資しませんか」って案件、本当に多いんです。で、去年、把瑠都関が引退することになったときに、引退興行のコストを何とかしれくれないかと相談がありました。国技館でやったわけです。企業家として出資したら「リターンは?」って考えますよね。でもその時クラウドファンディング試してみようと思いつきました。シューティングスターで「断髪式に参加したければ10万円で参加できます」って10名募集したんです。3日で126万円集まりました。相撲の歴史を知っている人に言わせると、断髪式ってそんなもんじゃないんでしょうけど、把瑠都関もエストニアの方なので「いいよ」って。僕もついでに土俵に上がらせてもらいました。本来ならタニマチでもない人がそんなことって、あり得ないですよね。
だからクラウドファンディングには人道寄付系のものもあれば、モノ作りもあって、あと日本では今度、株式の少額のも始まるんですかね?今後、日本でもっと活性化していくのか、単なるトレンドで終わるのか。今後のマーケットをどうご覧になっていますか?
山本:そのご質問に答えるのは難しくもあり、難しくないとも言えます。難しくないというのは、基本的に私はクラウドファンディングは流行りで起きているムーブメントではなくて、必然的にこういう流れになっているから生まれたんだろうと考えているので、このまま芸人の一発芸のように終わることは絶対なくて、何かをやるために資金を集めたい人とお金を出してあげたい人が直接につながるという投資の仕組みは広がっていくと言い切れます。ただその流れが今のクラウドファンディングのプラットフォームのような形のまま残るのかは、ちょっと分からないです。もしかしたらもっと違う、私たちがまだ思い付かないような仕組みになっているかもしれません。
福田:去年の夏ごろ、アイス・バケツ・チャレンジというのがあって、まさに自分が一発芸人だったなと思うぐらいズブ濡れになりました(笑)でも結局、日本ではたった2000万円しか集まらなくて、アメリカだと60億円集まりました。寄付文化の違いもありますが、いかに本来の意図が伝わっていないか痛感しました。山本さんは、必然から来ているから形式こそ変われ、クラウドファンディングは根付いていくだろうと。沼田さんは?
沼田:その質問はよく投資家サイドから受けますね。クラウドファンディングビジネスで儲けたい方々から聞かれるんですが、正直言うと、よく分かんないなと。マクロ的にというか、純子さんがおっしゃったみたいに、トレンドを考えたら、市場自体は爆発的に成長していくと思います。ただ、この業界自体、理念先行ゆえに人々の関心が寄りやすいのか、参入したがる人や企業が多いので、「クラウドファンディング市場拡大の波に乗って、GREEN FUNDINGが一人勝ちできますか」って言われると、できたらそうなりたいけですけど笑。市場が爆発的に大きくなっていく中で、誰がどういうポジションを取っていくのかは、日本の場合は特にいまだ混然としている気はします。一昨年ですかね、サイバーエージェントさんがマクアケというサイトで入っていらっしゃって。大企業が参入したのは初めてだと思うんですけど、ローラー式にいろんな所で「クラウドファンディングしませんか」と積極的に営業活動をされています。そうすると既存でちょっと有名だった競合のサイトなんかがもろにリプレイスされていったりしています。逆に「じゃあサイバーさんは安泰なのか」と言われると、それこそリクルートさんが本気で入ってきたら、ちょっと変わっちゃうかもしれないですし。
幸いGREEN FUNDINGはお陰様で着実に成長を遂げていて、GREEN FUNDINGを愛してくれている支援者・起案者・パートナーとネットワークができていると思います。元々IT村では全く無名で、後押ししてくれるような人脈もなく、大きな資本のバックもついていなかった自分が始めたサービスですが、今はNo.3,4あたりをきちっとキープし、トップもうかがえる力がついてきていることは幸運だなと思います。成長できている理由は何か?ってよく聞かれるんですが、うーん、なんでしょうか。一つだけ大事にしていることは企業理念である「良心」と「人と人の縁」を大切にしていることです。やはり日々「縁」に感謝し真面目にこつこつ積み重ねていくこと以外に正解はないのかもしれません。
山本:こないだパルコさんも入ってきましたよね。
沼田:自分たちでつくってプラットフォームになりたがっているお客さんが多いですね。