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グローバル化したヒッピー!?

柳瀬:数年前、インフォバーンの創業者である小林弘人さんと僕とで『インターネットが普及したら、ぼくたちが原始人に戻っちゃったわけ』という本を書いたんです。この本をで、僕たちは、インターネットの発達によって、人々のコミュニティの単位が、国家や大企業のような巨大なサイズからかつての部族社会のような小規模集団単位になるぞ、という話をしました。
 ネタもとになったのは、進化生物学者のロビン・ダンパーが書いた『友達の数は何人?』。この本は、「700万年間の進化を経て発達した人間の脳みそがリアルな友人や仲間として認識できるのは大体150人ぐらいまで」といういわゆる「ダンパー数」を披露したものです。国家や大企業のような巨大集団が生まれたのちも、人間自身の脳のサイズは変わっていないので、いまでもこのダンパー数を有効だ、というのがロビン・ダンパーの説です。
 じゃあ、なぜ人間が国家や大企業のような巨大集団をつくれるようになったかというと、150人以上で同じメッセージ、同じ思想を共有する道具が発明されたから。すなわち、言語、共有できる物語、宗教の発明だ、と論じたのが、昨年大ヒットしたユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』ですね。相前後して巨大河川文明において巨大農業が誕生し、大量の人間を食べさせることができるようになった一方で、貧富の差が生まれた。言語、宗教、農業革命、この三つで、150人の村よりけた違いの大きな共同体がつくられるようになった。それが国家です。
 ただし、国家という組織は、人間が発明した文化の産物であって、人間自身の脳みそがDNAレベルでいうと、国家の誕生以前とさして変わっていない、といわれます。  今、生まれた赤ちゃんを5000年前に連れていけば、ギャートルズの子供として育つだろうし、5000年前の赤ちゃんを現在に連れてくれば、イマドキの子供としてスマホを駆使するだろう。つまり、ここ数年一気に進化したのは人間ではなく、文化文明だと。

福田:後天的な環境によって変わる。

柳瀬:で、ここから先がマクルーハンの話ともピタッとはまるわけなんですけど。僕らの本の結論も「電子的メディア、すなわちインターネットが発達して、まさに時空を超えてコミュニケートできるようになると、巨大な共同体に属する必要がなくなり、われわれは再び脳みその限界に合わせた150人の村に戻る。原始人化する、部族化するだろう」と。そうなるであろうことをマクルーハンは「ダンパー数」が発見される前から『メディア論』で語っていた。「やられた!」と思いました。

福田:ICT(情報通信技術)をベースにして、スマホみたいにコンピューターを町に持ち出せるようなライフスタイルが定着したことによって、例えばヒッピーのようなある特定の趣味嗜好の小グループがグローバル化出来るようになりましたよね。何か最近、奇妙なホビーがはやっているじゃないですか。すごい究極の場所でアイロンかける人とか。

柳瀬:「何ちゃらアイロン」、あ、エクストリームアイロニングか。高山のてっぺんとか、海の底とか、超高層ビルのヘリとかで…。

福田:ニッチでやる人は少ないけど、ああいう特殊なものが、ソーシャルメディアを通じて、いとも簡単に国境を越えて一般に知られてしまう。

柳瀬:そうですね。

福田:さっき言われたある特定の群れというか「族」は、言語や宗教や農業革命を通じて150人以上のまとまりができるようになったことを利用して、国家というものをより強大にさせました。その反面、大きな戦争もあって、国は、そこで生まれたならその国に帰属するということにしていますが、それって勝手に決められたルールですよね。

柳瀬:たまたま生まれた「場所=国」に縛られる。

福田:メルカリで物をやりとりしたり、ビットコインみたいに暗号化された新しい貨幣を使うことによって、国家が統制できない経済圏だとか、物流の仕組みだとか、文化ができちゃうと、国家って崩壊していくじゃないですか。

柳瀬:インターネットの発達で、すでに情報とビジネスの側面から見ると、国境がなくなりつつありますよね。

福田:その流れは、ますます加速しちゃう。

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