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やりたいことが見つかるまで、 ひたすら寝ていればいい

沖縄離島「世捨て人」として生きた"じょうぐちはるお"の人生哲学。   Talked.jp

驚いたことにジョージは、孤島に暮らしながらもインターネットの存在を知っていた。ノーリーにも、「働かなくても、君たちの欲しい物は全部あるじゃないか。何でも自分で作れるし、君は若いから、インターネットも欲しいだろう。ここ、ネットが入るんだよ。こういう生活をしているよと、ネットで配信でもすれば、それだけでも生活できるんじゃないか」と言っていたそうだ。もちろん、ジョージ自身はネットはできなかったけれど、「それで生きていける」というところまでの想像力を持っていたこと自体、私はすごいと思った。

ジョージの発言を聞いていると、こちら側の価値観、つまり「普通はこう」という、その考え方のベース自体が間違っているのかもしれない、という気がしてくるから不思議だ。「働くのは社会人として当たり前でしょう」とか「生きていくためには、お金を稼ぐことは必要に決まってる」という考えが、根本から覆される。ノーリーも、こう続けた。
「最初の出会いで、常識を疑うというインスピレーションをもらいました。それで、ジョージさんのことが好きになったんだと思う」 週に3~4回くらい、頻繁にジョージに会いに行っていた時期もあったそうだ。
「いつでも、ゆっくりして泊まっていきなさいって言ってくれました。キャンプでも張って、1日でも2日でも、好きなだけって。…今思い出したんですけど、“人間は、逃げ場所を作っておく必要がある”ともジョージさんは言っていました。“こういう世の中から、逃げ場所を作っておくといい。いつ、そこにきても自分の空間が作れるようなところ。誰からも邪魔もされない、なんのしがらみもない場所を作っておいたほうがいいよ”って。そう勧められましたね」

ジョージの人生哲学に、一層惹き込まれる。ノーリーは、さらに続ける。

「人生が行き詰っている時こそ、そういうところにおいで、と。で、僕は“そこで何をすればいいんですか”と尋ねたら、“ただ寝て、起きなさい”と。もう飽きるほど寝て起きた時に、何かやりたくなる。それがやりたいことだよって。だからやりたいことが見つかるまでは、ただ目をつぶって、自然のあるところで、静かに黙って休んでおけば癒やされるんだと教わりました。最初、この暮らしを始めた時、2年間くらいは人恋しかったそうです。“自分一人だけ”ということが寂しかった、と。でも2年経ったら慣れてしまって、そこからはまったく孤独であることは気にならなくなって、ずっと幸せな状態でいられたそうです」

「やりたいことがない」「やりたいことがわからない」と言う人は少なくない。でもジョージのいうように、スマホを触わることもなく、ただひたすら寝て起きたら、「何か食べたい」「じゃあ美味いもの、なんか作ろうか」となるだろう。そこから料理が面白くなって、料理人になりたいと思うようになる人もいるかもしれない。そうやって偶然、お金をうまく稼げた人は、人生の中で社会に良いことにどんどん使ってほしいし、今は苦しい局面にいる人も、社会的に負けなんて落ち込まず、ひたすら寝て起きて、「やりたい」と思ったことを始めたらいいのではないか。たとえば様々なクリエイティブで良い物を作ったり、人を笑わせたり。そういうふうにして、きっと人生は、「自分らしい能力」を見つける旅なんだと、ジョージに教わった気がした。

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